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異世界の王女は現代で異世界の夢を見るか  作者: うあこ
第一章 2人の王女は現代に適応する
15/18

手料理を振る舞う

「さて、準備も出来たし作っていくわ。期待して待っていて頂戴」


フィオナが気合十分に、今日使う予定の食材をキッチンカウンターに並べていく。エプロン姿もすっかり板についてきた。包丁を握る手つきも、最初に比べれば随分と慣れたものだ。


何ができるのか楽しみにしつつ、俺は「悪いけどお願いね」と声をかけてダイニングへ移動する。


ふと視線を向けると、ルッカがソファーの上で、買ったばかりのお菓子の封を今まさに開けようとしていた。


「ダメだよルッカ!」


慌てて止めると、ルッカはびくっと肩を揺らす。


「フィオナが料理を作ってくれてるんだから、大人しく待とう。今お菓子食べちゃったらご飯が入らなくなるよ。そうなったら作ってくれたフィオナに失礼だよ」


俺がそうたしなめると、ルッカはぶーっと頬を膨らませながらも、渋々お菓子を棚に戻した。


棚には今日買ってきたお菓子が、所狭しと並んでいる。


「ほんと、沢山買ったね……」


改めて見ると、なかなかの量だ。


「ほ、欲しかったら分けてあげてもいいんだぞ」


そう言いながら、さりげなく棚の前に立ちはだかるルッカ。言葉とは裏腹に、独り占めしたい気持ちがなんとなく伝わってくる。


一応俺の金なんだけどなぁ。いや、いいんだけどさ。


「ご飯前以外で、小腹がすいた時に食べたらいいよ。ルッカが買ってきたお菓子なんだから、ルッカが食べていいよ」


そう言うと、ルッカの瞳がぱあっと輝いた。


「ありがとうだぞ!凪はいいやつなんだぞ!」


満面の笑みでそう言われると、まぁいいかという気分になるから不思議だ。


苦笑しつつ、前から少し気になっていた事を思い出す。この機会に聞いてみようかと、ルッカに小声で話しかけた。


「そういえばさ、最初ここに来た時に二人が掴み合ってたけど……ひょっとして、あんまり仲が良くなかったりする?」


キッチンにいるフィオナに聞こえないよう、声を落とす。


ルッカなら、重たい話にはならないだろうと思っての事だ。


「良くは無いけど、悪いという訳でもないんだぞ」


即答だった。


「あの時はフィオナが……」


そこまで言って、少し言葉を切る。


「まぁ私たちは王女だしな。王女同士で色々あるんだぞ」


俺は少しだけ後悔する。無神経だったかもしれない。


「ごめんね、無理に聞きたい訳じゃないんだ。あの時は少しびっくりしたけど、それ以降別に喧嘩してる様子もないしさ。仲良くしてくれたら嬉しいなって思っただけだよ」


そう言うと、ルッカは一瞬きょとんとしたあと、ニカッと笑った。


「別にフィオナは元々悪いやつではないんだぞ。むしろ、努力家で一生懸命で、真面目すぎるだけなんだぞ」


照れ隠しみたいな言い方だ。


喧嘩するほど仲がいい、が当てはまるのかどうかは分からないけど、少なくとも嫌っているわけではなさそうだ。


「それなら良かった」


キッチンから、トントンと子気味良い音が響いてくる。包丁がまな板を叩く音。油が温まる小さな音。いい匂いも漂ってきた。


楽しそうに料理をするフィオナをなんとなく眺めていると、ふと目が合った。


少しだけ、頬が赤い。


「そんなに時間はかからないから、あんまり見ないで」


「フィオナが照れてるんだぞ!」


すかさずルッカが茶化す。

次の瞬間、ヒュン!と空気を切る鋭い音がした。


「ぶっ!」


ルッカの頬に、皮を剥いたじゃがいもが見事にクリーンヒットしていた。


「痛いんだぞ!」


「集中を乱さないで頂戴」


フィオナは何事もなかったかのように包丁を握り直す。


……仲は悪くない。うん、多分。


そう思いながら、俺は転がったじゃがいもを拾い上げた。


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