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異世界の王女は現代で異世界の夢を見るか  作者: うあこ
第一章 2人の王女は現代に適応する
12/17

出勤と留守番

駅の近くの駐車場まで自転車で走り、そこから歩いて駅へ向かう。ちょうど来た電車に乗り、空いている席に腰を下ろすとスマホを取り出し、フィオナに渡したタブレットへ、メッセージを送った。


『大丈夫?問題なく過ごせそう?』


 すぐに既読がつき、返事が返ってくる。


『何も問題はないわ。安心して仕事してらっしゃい』


 ちゃんと使いこなせているらしい。とりあえずは一安心だ。この世界のことを知るには、やはりネットが出来るのが一番早いだろうと思ったからだ。


 目的の駅に着き、そこからまた歩いて会社へ向かう。道すがらスマホが震える。


『楽しいぞ!』

『面白いな!』


 どうやらルッカだろう。思わず苦笑して、『良かったね』とだけ返す。そんなやりとりをしているうちに会社へ着き、更衣室で着替えてから事務所に入る。


「おはようございます」


 同僚や先輩が「おはよう」と返してくれる中、タイムカードを押して椅子に座る。すぐに朝礼が始まり、終わると作業場へ向かった。


 今日は葬儀用の祭壇花の注文が入っている。分担して花を刺していく。水を含ませたスポンジにベースとなる花を刺し、形を整え、そこへ色花を差し込んで埋めていく。フラワーアレンジメントとその配送が、俺の主な仕事だ。


 出来上がったアレンジを車に積み、式場へ運んで飾る。手が空く時間もあるので、その間は休憩したり掃除をしたりして過ごす。


 そうこうしているうちに退勤の時間になった。事務所へ戻ってタイムカードを押し、更衣室で着替えて会社を出る。


『今から帰るよ』


 タブレットへ送ると、またすぐ既読がつく。


『待っているわ』


 それだけのやりとりなのに、心の奥がざわっとした。悪い意味ではない。昔、祖父が「おかえり」と迎えてくれていた頃に感じていた感覚だ。


 家で誰かが待っている。


 それだけで、こんなにも心があたたかくなるのかと気付く。


 家に着き、扉を開ける。


「ただいま」


 フィオナがゆっくりと玄関まで歩いてくる。その横を、ルッカがどたどたと音を立てて走ってきた。


「おかえりなさい」

「おかえりだぞ!」


 思わず笑みがこぼれる。

 意思に反してこの世界に呼んでしまったかもしれないという罪悪感。すぐに帰してあげられない申し訳なさ。それでも、どこか今の状況を喜んでいる自分がいる。そんな自分に気付き、少しだけ自己嫌悪する。


「2人はどうだった?誰も来なかった?」


 そう尋ねると、2人は急に神妙な顔になった。


「それが……」


 フィオナが言いにくそうに口ごもる。


「誰も来なかったぞ」


 ほっとしかけたところで、ルッカが「でも」と続けた。


「スマホが楽しくて、一日中触ってしまってたぞ!」

「私も……」


 どうやら事件は起きていないが、別の問題が起きていたらしい。


 スマホやタブレットは現代病である。そこにエルフもドワーフも関係なかった。

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