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騎士団長の息子

 国立のウェルネシア学園は、貴族の子女が集められて教育される。よほどのことがない限りは入学すべきところで。

 デビュタントまで、領地を出なかった私には友達と呼べる人がいなかった。教室では席が決まっていなくて、ぽつんと一人で座っていた。


「隣の席空いてますか?」

 

 メガネをかけた紅い髪の、だけど鍛えていそうな容姿の男の子に声をかけられた。断る理由も思い浮かばなかったし、今の授業だけだろうと気軽に答えた。


「ええ、どうぞ」

「良かった。騒がしいところは苦手で」


 あたりを見回すと、こちらを睨みつける女生徒が何人もいた。

 やられた。盾にされちゃったのね。


「俺はケネス=アルウェッグ。よろしく」

「クレア=バートンよ」


 アルウェッグといえば、侯爵家で騎士家系。騎士団長の家だったはず。もしかして話に聞く攻略対象かしら。


 気になったけれど、名乗り以上は特に話さず授業を受けた。


 2つめの授業の時間で、髪の長い若い先生がやってきた。語学の先生だ。少し離れた国のスウェイン語を学んだり、古語も少し学ぶらしい。


 翻訳の魔法が使える私には、あまり必要のない授業でもある。とはいえ、寝るわけにはいかないわね。前は向いたまま、授業を受けた。


 ハモンド先生。教師とはいえ若くて顔がいい。黒く真っ直ぐな髪を後ろでまとめ、凛々しい顔立ちに紅い瞳。


 前世の世界では教師と交際することは良くないけれど、この世界では婚約をしてしまえば問題ない。贔屓と言われないかは気になるところだけれど。


 退屈な授業が終わったころ、ライオネル様がやってきて、隣にいたアルウェッグ様を見て妙な顔をしていた。


「ケネスと知り合いだったのか」

「いいえ、今日たまたま席を隣にしただけよ」


 アルウェッグ様が会釈をして席を立つ。

 

「そうか。昼食を誘いに来たんだ」


 ライオネル様が微笑んで私に告げると、周囲がざわめいた。


「あの子は誰なの?」

「アスター様が笑ったわ」


 なんて声が聞こえた。おかしいわね。ライオネル様は初めて会った時からよく笑っていたと思うけど。


「私って、友達が出来なさそうね」


 ため息を飲み込んでライオネル様と食堂に向かった。

 こういうとき、エスコートする人も多いのだろうけど、ライオネル様はちょうどよい距離を開けただけで歩いていく。前世が日本人の私にはその方が心地よかった。

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