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クレアの告白

 侍女に暖かい紅茶を頼む。私達は呆けて疲れたまま、まだ応接室にいた。


「お父様とお母様に話したいことがあります」


 両親はライオネル様との馴れ初めかと期待したようだった。大きくは外れていないが、そうではない。


「実は私には前世の記憶があるのです。違う世界の日本という国で学生をしていた記憶です」


 紅茶を持っていた手が一瞬止まり、ソーサーとカップの当たる音がする。

 両親が驚いている。


「たぶん、思い出したのは5歳の頃、高熱を出したときです。でもその時は流れ込んできた感覚が前世のものとは気づきませんでした。あるはずのものがない、みたいな感覚でした」


「鼻をかんだときどうしてティッシュじゃないのと言ったね」


 お兄様が相槌をうつ。


「ツナマヨのおにぎりが食べたいと言ったこともあった」


 懐かしそうに目を細めるお兄様を見る。

 拙い説明を聞いたお兄様は、お米を探したり、マヨネーズを試作したりしてくれた。内陸のこの国でマグロはなかったけれど。


「ライオネル様にも前世の記憶があるんです。私よりはっきりとした記憶です。それで目をつけられて……」

「クレアを利用するつもりで!?」


 私はゆるゆると首を降る。


「仲間を探していたそうです」


 婚約の真相に目を(みは)る両親に、

 

「婚約のことはいいのです。仲良く出来そうですから。ただ、これから何か起こりそうで不安なのです」


 ライオネル様は、協力者と言った。たいていの物語には障害がつきものだ。ヒロインが選んだルートにはどんな物語があるのだろうか。乙女ゲームのことまでは話せなかった。


 隣に来たお兄様は、そっと私を抱きしめてくれた。




 


 デビュタントは15歳の新年だった。学園へはその年の春に入学する。

 ライオネル様は2つ上の上級生。そうして舞台は整い物語が始まる。未来を決める学園生活のスタートを迎えるのだった。

 

 果たして、エミリアと言う名の少女は同じクラスにいた。ピンクブロンドのストレートヘアに琥珀色の瞳で、庇護欲を誘うような可愛らしさのエミリアは、容姿は王道のヒロインと言う感じだった。


 エミリア=ロンドは、ロンド子爵家に養女に迎えられていた。入学直前に養女となったエミリアは、原作よりも天真爛漫だった。


 ライオネル様によると、ゲームではプレイヤーに人気な、自分を持った賢い少女が主人公だったそうだ。

 エミリアはデフォルトネームで、容姿もアバターで変えられる。だから、本当のところエミリア=ロンドがヒロインである確証はまだなかった。


 そして私達は、ヒロインが選ぶ攻略対象と国の危機を突き止めたい。平和のために。

 少し距離を取って観察するのか、友達になってしまうのか、それが悩ましいところだった。

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