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突然の婚約

「私は受験生の頃、交通事故で死んだのだと思います。スマホは持っていたけれど、ゲームはしませんでした」

「そうか、この世界はスマホのゲームだから攻略対象も多くてね、私もそのひとりだった。

 あぁ、攻略対象というのはヒロインが恋愛をする相手で、その相手ごとに物語が展開されるんだ。

 ヒロインのデフォルトネームはエミリア。平民だけど、伯爵家に引き取られるんだ」

「ヒロインは見つかったのですか?」

「それが、ヒロインも見つかってないんだ。ルブラン伯爵家にいないということは私達と同じく転生者ではないかと思っている」


 転生者ならヒロインになりたくなかったのかしら。なにかヒロインになるのにデメリットでもあったのだろうか。考え込んでいると、


「まあ、平民を探すのは難しいからね。春からの学園に入学してくるかもしれないと思うんだ」

「ゲームはヒロインの覚醒する魔法によって攻略対象へのルートが変わる。聖魔法で治癒が使えると第二王子で、火炎魔法で敵をなぎ倒せると魔法師団長の子息という具合にね」


 魔法ごとに変わるなんて、それは面白そうなゲームね。

 この世界には魔法がある。多くの人が大なり小なり使えるものだ。ただし大きな魔法を使えるものは多くなく、魔力量が多い者は貴族に多い。平民でも魔力量が多いと貴族の養子になることもあるからだろう。


「君はなんの魔法が使えるんだい?」

「私は簡単な治癒と外国の本が読めるくらいです」


 実は欠損も治せることと、会話の翻訳が出来る事は伏せておく。看護師系の大学を目指していたから、それの影響かもしれない。


「使える魔法も原作と違うのか」


 ライオネル様は驚いていた。


「協力者が欲しいと思っていた。バートン家が取扱う品は目新しいものが多かった。誰かが転生者だろうと目をつけていた。だから君に会いたいと焦がれていたんだ」


 協力者? とは思ったが、孤独感はわかる。自分だけ離れたところに迷い込んだみたいなのだから。


 見目(みめ)が良いのは、乙女ゲームの攻略対象だからなのかと、納得しつつアメジストの瞳を見つめた。


「ライオネル様、私はしがない伯爵令嬢ですが、よろしくお願いします」


 そうして屋敷に戻ると、ライオネル様の独壇場で、あれよあれよという間に正式な婚約が整った。あとは陛下に許可をもらうだけだからと、ライオネル様は機嫌よく書類を持って帰って行ったのだった。


 嵐のようだった。


 何も知らない両親は、良家に見初められたと喜びつつも困惑は隠せないようだった。私の幸せを願ってくれる優しい両親だ。お兄様に目を合わせ頷く。私は、私の前世を話すことを決心したのだった。

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