表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/31

ベビードラゴン

「きゅぴっ」

 

 草色の斑のある卵のてっぺんが割れて、赤い爬虫類のような頭が覗いていた。

 いやいや、目をそらしちゃいけない。爬虫類みたいじゃない。子竜だ。


 マイラと顔を見合わせる。

 カリカリっと音がする。卵をさらに砕いて子竜が出てきた。


「どうしよう、クレアぁ」

「かわいい! けど名前はつけちゃいけない気がするわ」

「そうよねぇ〜」


 情けない顔で話をしていたら、大きな影が近づいてきた。親竜だ。空にブレスを放って威嚇された。


「助けてくれぇ!」

「鎖を解いてくれ!」


 野盗たちは、騒ぐ人と泡を吹いて気絶した人に分かれた。

 

 お兄様とライが、私たちのそばに立ってくれた。どうしたらいいんだろう。私の翻訳って竜語も話せるかしら。体の震えが止まらなかった。


「きゅぴっ きゅぴっ(だいじょうぶだよ)」


 子竜の声が聞こえた気がして、少し頭が冷えた。


「ぐぁお〜(かわいい坊やはどこ?)」


 竜が近くの木をなぎ倒しながら降り立った。


 足元に降りた子竜が、ちょぴちょぴと足音を立てて、歩いていく。


「きゅぴっきゅぴぴぴぴ! きゅぴっ」

「ぐぁ! ぐるるるる」

 

「何か……話しているのか」

 

 ライが私の顔を見て、つぶやく。

 

「うん、助けられたとか、帰らないとか聞こえる……」


 親竜が頭をもたげて、子竜に頬ずりしたように見えたら、去っていった。


 え? 一緒に帰らないの?

 

 てとてと、と小さな音を立てて子竜が戻ってくる。


「きゅぴぴっ きゅぴるぴぴ(コトバわかる?)」

「だめよ、一緒に国には帰れないわ」

「とにかく殿下に相談しよう」


 お兄様が水晶を取り出す。


「こちらグラハムです。緊急事態です、応答してください」

「どうした、こちらアルバートだ」

「殿下、竜の卵が目の前で孵化してしまいました」

「竜の……たまご?」



「どうなっているのか教えてくれないか」


 新たな声が聞こえて、そちらを向くと立派な出で立ちの青年と従者らしき人が見えて血の気が引いた。身分の高い人だわ。


「サイラス王子殿下……」


 ライがつぶやく。


「おや、俺の顔を知っているのかい? 初めて会うと思うんだが」


 威圧感を抑えないまま、サイラス王子と呼ばれた人が睨んでくる。


「サイラス! サイラスって聞こえたけど! お〜〜い」


 水晶から声が聞こえて、通話中だったのを思い出す。アルバート殿下!


「そこの水晶から声が聞こえた気がするんだが」


 少し圧を抑えたサイラス王子殿下が頭を抱えて言った。


「気のせいじゃないよ〜。サイラス〜。俺だよ俺、フェイムのアルバート!」


 この緊張感の中、アルバート殿下の気の抜けた声が聞こえて、水晶の近くまでやってきた子竜が「くわっ」と鳴く。


「竜のブレスが聞こえたから来てみれば、子竜がいるとは。

 やはり伝承通り、竜は巫女に懐いているとみえる」


 マイラが首を横に振る。サイラス王子はマイラの様子などお構いなしだ。

 

「竜の花巫女よ、俺の妃になってもらいたい」


 巫女ってなんなのよ。巫女だから求婚っておかしいわ。

 

「マイは、巫女じゃないわ」

「じゃあ君が巫女だというのか?」

「きゅぴぴぴっ」


 私の前に子竜が立ち、サイラス王子に話しかけようとする。

 子竜の横にお兄様が並んだ。緊張しているのは背中からでも伝わる。


「俺の婚約者も妹も、口説かないでいただきたい。側妃になど渡せない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ