ミルド共和国
国境はしばらく待ったものの、難なく超えられた。職員さんが、可愛い制服ですね、と褒めてくれた。お揃いコーデが制服に見えたらしい。可愛いのは嬉しいけれど、少し面白かった。
今度は西へ、スウェイン王国との国境に向かって馬車を走らせる。
ミルド共和国には海があって、海産物が食べられるらしい。生の魚はないと思うけど、どんなものがあるか楽しみだわ。
夜には国境手前の街に着いた。
「お忍びなので貴族用の宿には泊まれないから、我慢してね。平民にしてはちょっと良い宿にしたから」
とお兄様が言った。
「おに……グラハムさん、私達の部屋はどこになるの?」
「レイは言いにくかったら、お兄さんでいいよ。3階の部屋で隣同士の部屋だけど、俺達が迎えに行くまで勝手に出入りしないで」
「わかったわ」
「食事は部屋に持ってきてもらおう。所作で目をつけられても面倒だ。さあ部屋に向かおう」
3階にある部屋は充分広いツインの部屋だった。前世で言えばセミスイートくらいなのかしら。全体的に淡い桜色でコーディネートされた落ち着いた部屋だった。
「素敵な部屋ね!」
「うん、花柄のカーテンも明るい木目のテーブルもみんな可愛いわ」
私達はトランクを開けて、翌日の服の相談をしたり、ポシェットに荷物を入れ替えたりする。ポシェットの中は整理しやすいわけではないけど、ボストンバッグくらいのものは入りそうだった。
お兄様のカバンには何が入ってるのかしら。興味が湧いた。
祭りには動きやすいパンツルックにしようと決めて、明日はゆったりとしたAラインのワンピースを着ることにした。コルセットの要らないワンピースなので馬車でも楽ちんだ。
そうこうしてる内に、お兄様達が宿のスタッフと一緒に来た。
「勝手に頼んでしまったけれど、夕食を食べよう」
赤いスープが見えるわ。辛いのかしら、トマトなのかしら。
「エビと白身魚のスープです」
私の視線を受けて、宿の人が説明してくれる。
「貝も野菜も入っていて身体に優しいので、ぜひごゆっくりお召し上がりください」
近くで見るとブイヤベースに似ていた。テーブルに並んだ他の料理はパエリヤのようなものと、パンとサイコロステーキと茹でた野菜と、フリッター? 何かを揚げたものがあった。混ざってる気はするけど、ヨーロッパ系の料理だ。
「アップルパイも頼んであるから、お腹は空けておくように」
見透かしたように言われて、私達はテーブルを囲んた。
「スープが絶品ね! フェイム王国では食べられないから嬉しいわ」
「フリッターは、白身魚みたいよ、レイも食べてみて」
「野菜も生で食べる習慣がないのかしら」
「でも、このマヨネーズみたいなソースはとても美味しいわよ」
お兄様とライは、賑やかな私たちの会話をにこやかに見ながら、積むように盛られていた肉をどんどん消費していく。たくさん食べられるのが不思議だった。
「明日はスウェイン王国に着くけど、この街で何か買い物するかい? ミルド共和国はパールの産地としても有名なんだ。海岸の街ではないから多くはおいてないと思うけど」
「レイ! パールだって。おそろいの髪飾りとかあるといいわね」
「そうね、髪飾りだと学園に着けていけるわね」
「パール以外には何があるのかしら」
「ナマモノは勘弁してくれよ?」
「もう、お兄さんったら」
ちょうどいいタイミングで宿の人がアップルパイと紅茶を持ってきてくれた。
「わぁ、美味しそう!」
「果実がたくさん入っていておいしいですよ」
「楽しみ! それで、あの! この街でのお土産のおすすめはありますか?」
「食べ物以外で!」
今度はライがにこやかに突っ込んだ。
「そうですね、この街は意外と工芸が盛んなので色ガラスのグラスとか小物がよく売れますね。あとは、香水も地域で違ったりするので、思い出に買われる方がいます」
「グラスに香水ですって。明日が楽しみね!」




