レモンスカッシュ
馬車はひとまずミルド共和国との国境に向かっていた。スウェイン王国とフェイム王国は、辺境の森に接している部分が多く、直接行くなら魔物の多い森を突っ切るか、更に向こう側まで行かなくてはならない。
国境を通る身分証をどうするんだろうと思っていたけれど、名前を書けば完成する身分証がすでに用意されていた。
ミルド共和国まではそれほど遠くないので昼頃着くようだ。
「昼食をどちらで取ろう。審査に時間がかかるから国内だと安心だけど、ミルドの料理は1泊するときに食べられると思うよ」
「無理をすることもないから国内で食べよう」
お兄様の言葉にライオネル様が返事をした。
国境付近の街で、食事をすることになった。人が立ち止まる街のせいか、とても賑わっていた。屋台が立ち並ぶ通りもある。とても良い匂いがして空腹を自覚する。マイラも遠くまで何があるか見ているようだ。
「なんだか、ふたりとも興味がありそうだから、外で食べようか」
お兄様が言ってくれた。しばらく冷やかしながら歩く。
「焼きそばみたいなのがあるわ!」
「手延の麺を使ってるから、どちらかといえば焼きうどんだな」
ライオネル様が答えてくれたけど、ソースの香りが香ばしい。まずはコレを買おう。
「あっちにホットドッグがあるわ」
「マイ、ひとりで行ってはだめだよ。ライはレイと居てくれ」
お兄様は慌ててマイラを追う。どうやって合流するのだろうと、ライオネル様を見上げると、片耳につけたイヤーカフを指差した。
「グラハムさんが渡してくれたんだ。通信ができるから大丈夫。話せる距離までは聞いてないけど、街ひとつは問題ないんじゃないかな」
「それだと安心ね」
「それにしてもグラハムさんって何者なんだ。転生者じゃないと聞いてるけど」
「前世の話をすると色んなものを作ってくれるの。作り方を知らない物がほとんどなのに凄いの」
私達は焼きうどんのような鉄板で焼いたヌードルを2つ受け取った。
「ら……
ライ。飲み物はどうする?」
「慣れて。旅行が終わってもライと呼んでほしい」
「うん」
「ホットドッグ、4つ頼んだらしいから、飲み物はこちらで買おう」
ビールのようなエールを売っている店を覗くと、ジュースやお茶も扱っていた。
「レモンスカッシュは人気だよ。ブドウジュースもあるよ」
レモンスカッシュ! 私の顔色を見た、ライはレモンスカッシュを4杯頼んでくれた。マグカップのようなコップの取っ手を器用に持つ。私はヌードルを持っていた。
「空いたら、そこの席を使うといいよ」
お店のおじさんが教えてくれて、席を取った。お祭りのようで、フードコートのようで、ワクワクした。
しばらくするとホットドッグと、唐揚げ? を持ったお兄様たちが戻ってきた。
「甘いものもたくさんあったわ。ベビーカステラのようなの、あとで買いましょう」
マイラが楽しそうに言う。お兄様は困惑しながらもニコニコしていた。
「レモンスカッシュもあるの?」
「これは名前も一緒だったよ。早速飲もう?」
キラキラした瞳で受け取るマイラに、私たちも笑みがこぼれる。一口飲むと爽やかな甘みで、少し汗ばむ陽気にとても嬉しかった。
「大口を開けて食べるのは久しぶりだわ」
「私も」
美味しいわねと言いながら、そうして私達は穏やかに昼食を頂いた。




