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旅の始まり

 マイラとお揃いの服を選んでから3日後、侍女が詰めてくれたトランクを持って馬車に乗り込んだ。


 レディドリィのスタッフは、裕福な平民の外出着みたいなレディメイドの服をたくさん持ってきてくれていて、その中から選んだ。


 今日は淡い水色のブラウスに、紺のベストとスカートだ。ベストとスカートの裾に可愛い刺繍がある。


 アルウェッグ侯爵家に着くと、薄ピンクのブラウスにワインカラーのベストとスカート――つまり私と色違いの服を着たマイラがいた。


 侯爵とお兄様が話し込んでいたけれど、侯爵の圧が強かった。やっぱり心配よね。


 マイラと合流したあとは、アスター侯爵家に向かう。


「ライオネル卿にも伝える予定だけど、3人は名前を変えて呼ぼうと思う。商会の仕事として隣国に入る予定だから、俺はグラハムのままでいいけど、貴族らしい呼び方はしないように」


 引率の先生みたいに、お兄様が説明をする。

 

「じゃあ、わたしはマイって呼んでください。前世の名前が舞だったの」

「マイ?」

「踊るって意味の名前なの」

「とても、素敵だね」


 しばらく考えて、私もマイラに習うことにした。


「それなら、私はレイにするわ」

「麗子? うるわしい方?」

「よくわかったわね」

「似合ってるもの」


 あとはライオネル様だわ。ライ? ネル? それとも前世の名前?


「レイってば、考えていることが、まるわかりね」

「いやだ、マイラったら」

「マイよ!」


「そんな二人には内緒のプレゼントだ」


 お兄様は、レースが綺麗なポシェットを差し出した。私は水色で、マイラのは少し大人っぽいワインカラーだ。


「女の子の荷物は多いからね、そのカバンは見た目よりたくさん入るよ。試してごらん」


「マジックバッグ!」

 

 マイラが声を上げる。いたずらが成功したみたいな顔でお兄様が告げる。


「君たちの前世の世界にはあったんだろう? 昔クレアが言っていたから、作ってみたんだ」

「それは、空想の中の話よ」

「グラハムさんって天才!」

 マイラは嬉々としてポシェットの中を覗いていた。


 アスター侯爵家に着くと、ライオネル様が乗り込むけれど、アルバート殿下が見送りに来ていた。本当に仲が良いのね。


 アルバート殿下は、俺のマリーにはかなわないけど、お揃いの君たちは可愛いなと謎な褒め方をしてくれて、緊張がちょっとほぐれた。

 今日も殿下は太陽のように眩しい。


 白いシャツに黒のスラックスの装いのライオネル様も加わり馬車の旅が始まる。シンプルな格好のライオネル様もカッコいい。


 お兄様が呼び名の話をすると、ライオネル様はしばらく考えて、


「ライでいい」


 と言った。ライなのね、と思っていたら、忍び笑いしたマイラが突っ込んだ。


「きっと一郎とか太郎って名前なのよ」

「なっ……!」


 わからないなって顔をしながらも、お兄様も楽しそうにしていた。

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