未知のうねり(ライオネル視点)
王宮の奥は今日も静かで、重厚な扉の前には衛兵が、音を立てないように存在していた。
私――ライオネル=アスターは、グラハム卿から謁見の申込みがあったと、アル殿下に呼ばれて、王族用の応接室の扉の外にこっそり控えている。
おそらくゲームと関わりのある話だと推測した殿下が、タイミングを見て話に参加するようにとの采配だ。
話は始まったばかりだし、中の声は聞こえないが、緊張感は伝わるような気がした。
ふと、圧を感じて廊下を見ると、静かに、しかし物々しい雰囲気の国王陛下がお一人でやって来た。
「国王陛下におかれましては「良い、まどろっこしいわ。中にはアルバートがいるな。それにしても雑な人払いで、今度はなんの悪巧みかな」
なぜ今、陛下が? 今度はとは? 疑問に思ったし進路を止めたいのだが、さすがに陛下を止める手立てはない。
陛下自らの手で、勢い良く扉を開け放つ。アル殿下が悪戯が見つかった少年のような顔をし、グラハム卿は慌てて立ち上がり頭を垂れていた。
後ろから入った私も頭を下げる。
「アルバート、なんの相談をしておるのかな?」
「彼は、グラハム=バートンで、商会を営んでいるものです。魔石を使った対のイヤリングをもらったんですよ。」
「魔石の……」
「ここに魔力を流すと離れていても話ができるのです。マリーと話すのに使おうかなぁ」
「それは本当はどう使うつもりなんだ」
「ち……父上!?」
陛下がアル殿下の頭を叩いた。パコンと存外いい音がして、笑いそうになった。いけない、ここは笑うところではない。
「わしがなにも知らないとでも? 調べようと思えばすぐわかるようにしておいて」
「父上に忠義がありますゆえ」
「アオカビから薬を作ってみたり、水路を整備したり、小麦の品種改良も悪いことではないが、しかしな」
陛下は額に手を当て、溜息をつくと、殿下の隣に腰掛けた。
「まずは座ろう」
私はグラハム卿の隣に座る。
「それで? そろそろ王位でも取りに来るのか?」
「そんなことは……!!」
驚いて陛下の顔を、まじまじと見てしまった。真意が見えない微笑みをしていた。
「いい加減、何をしているか教えてはくれんのか」
「グラハム卿がいる前では」
殿下が誤魔化そうとする。
「おや、そちらの商人は仲間じゃないのか」
商人!!! もう役割もバレているのか。
「子供の権力だけでは限界があるのではないか。動きやすかろうと王太子も定めてなかったが……」
アル殿下が陛下に頭を下げた。
「こう見えても親だからの」
アル殿下は、緊張を解いた。父親の顔をした陛下に、安心したようだった。
「父上に全て話します。
はじまりは、俺が8歳、フレディが6歳のお茶会の時でした」
アル殿下が語り始めた。判断としては正しいと思う。だが、陛下はどう考えるだろうか。私は不安を表に出さないように努めた。グラハムは、身分もあってそこにいるだけだ。




