絶対の味方
「頼もしくて頼りたくなるよ。侯爵令嬢が友達で良かったね」
お兄様は微笑んでいるけれど、剣呑な目だ。マイラを怪しむ必要はないのに。
「トライフルもあるのよ。食べましょう」
目配せすると、メイドが3人分サーブしてくれた。いつの間にかお兄様の前にも紅茶があった。流石すぎる。
「少し懐かしいな、領地にいた頃は時々食べていたけれど」
「先日、カフェで食べたの。ペールグリーンの屋根の…………」
「ああ、ヴェルデか。出店してかなり経つから忘れていたな。クレアのアイデアを形にしてみた店なんだ」
「クレアの! 絶対可愛い店ね。私も行ってみたいわ」
マイラが手のひらを合わせて、目を輝かせる。
「マイラ嬢と行ったんじゃなかったのか」
「えっとアルバート殿下に教えてもらって、ライオネル様と行ったの」
「そうか、良かったな」
お兄様の目が少し揺れて、それをマイラが見つめていたことに、私は気づいてしまった。
マイラは誰も選ばないと言っていた。それは最善なのか、幸せなのか疑問が頭をもたげてしまったのだった。
「グラハム卿のお店は他にもあるんですか?」
マイラがお兄様に話しかける。そういえば、外出しないから行ったことがなかったわ。
「クレープとジュースのお店の話は聞いたことがある気がするわ」
「あれは、市がたったときだけだからなぁ」
「クレープってクレープを焼く鉄板があるの?」
「おや、クレープを知っているのかい?」
マイラったら隠す気がないんだから。とはいえ、私も何があって何がないかなんて把握しきれてないけど。ホットケーキにはやられてしまったし。
私は溜息をついてマイラをみた。ごめーんみたいな顔をしていた。
「マイラも記憶があるの」
この空気をなんとかしたくて、お兄様に伝えた。
「なるほどね……。何人そのような人がいるんだい?」
こめかみを押さえたお兄様が、絞り出すように言ってから、紅茶を口にした。
「まだわからないの。3人かも知れないし、もっと増えるかも知れないし」
「もしかして、さっきの要注意って」
お兄様が気づいてしまった。
「友達になるとは限らないってことか……
それで、転生のことを知っているのは何人いるんだい?」
「私の知る限りグラハム卿とアルバート殿下ですわ」
マイラが答えた。
「殿下が。随分大きな話になっているじゃないか。何か企んでいるのかい?」
私とマイラは顔を見合わせた。膝に乗せた手が震えていた。お兄様には隠せなくて、大きな手が冷えた私の手を包んでくれた。
「たとえ何が起きようと俺はクレアの味方だよ」
優しい声が耳に響いた。甘えてばかりでごめんなさい。
「国家転覆や反逆でないことだけは保証するわ」
凛としたマイラの声が通った。




