グラハム兄様
結局、昼休みの時間は限りもあり、後日マイラ様を我が家に招待することにした。
そして私はお兄様と話をしようと思ったけれど、もしお兄様が知らなかったらと思うとお父様に聞くのが先だわと思い直した。
帰宅したら、心を落ち着かせるためにまず着替えをした。そしてお父様に紅茶を持っていきたいと侍女に相談し、ワゴンを押してお父様の執務室に向かった。
ノックをして、執務室に入れてもらう。執務室には滅多なことでは訪れないので緊張する。
「休憩にしませんか? それと話したいことがあります」
侍女に人払いを頼んで、退室してもらった。
「用意がいいね。なんの話だい? 前世の話より驚くことがあるのかな」
私達はローテーブルを挟んで向かい合わせのソファに腰を下ろした。
「グラハム兄様のことです」
「グラハムがどうかしたのかい?」
「わたしとは血が繋がっていないと聞きまして」
お父様の瞳が揺れる。
「グラハムに聞いたのかい?」
私は首を横に降る。お父様は勘がいい。
「だとしたら、アスター様かな」
「そうだけど……お兄様は知ってるんですか?」
「うちに来たのは5歳の頃だったからね。いずれにしても跡取りはグラハムのつもりだったから、話題にしたことはなかったが」
「私は、今日知って混乱しています」
「無理もない。
それで。どうしたい? グラハムが良いなら、アスター侯爵家との婚約はやめるかい? こちらから言いにくいのは確かだが白紙に戻せないわけじゃない」
驚き、混乱する私は、不安を隠せない顔をしていたと思う。そうしている間に廊下を慌てて歩く音が聞こえてきた。
「クレアが執務室にいると聞いたが?」
侍女の静止では無理で、扉を勢い良く開けてお兄様がやってきた。お父様はやれやれという顔を隠しもせずにお兄様の顔を見やった。
「クレア……! どうした、アスターの坊っちゃんに何かされたか?」
慌てて、隣に来るお兄様の顔を見て、私は泣いてしまった。
「……ちがうの……」
「泣いてるじゃないか……」
お父様が呆れたように、告げた。
「まあ、ちょうどよい年頃でもあるんだが、グラハムが養子だと知ったんだよ」
動揺したお兄様が、私に置いた手を外す。お兄様を見つめる私は、危うく見えたに違いない。
「ちゃんと妹だと思っているよ、クレア。血が繋がってなくても一緒に育った兄妹だ」
お兄様は、苦しくないように、でもしっかりと抱きしめてくれた。
耳まで抱きすくめられていた私には、お父様が小声で言ったことは、聞き取れなかった。




