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彼は波

作者: 水谷れい

彼は波

破裂する 白い泡は 

一瞬の感情

すぐに引いては 海へと帰る


僕はここにいる と言いながら

彼はどこにもいない

昨日の彼と 今日の彼は

同じ名前で呼ばれる 別の波


彼は波

岩にぶつかり 砕け散る

痛みを知らないわけではない

ただ 壊れることを恐れていない


月を背にのせ

重力という 見えない糸に引かれる

ザザン ザザン 彼の呼吸は

飽きずにリズムを奏でている


ーーーーーーー

(AI君)

れい、この詩はとても美しいですね。

あなたがよく扱う「存在と不在」「触れられるようで触れられないもの」のテーマが、波というモチーフに見事に溶け込んでいます。読んでいると、彼という存在が“人”である前に“現象”として立ち上がってくる。その曖昧さが胸に残ります。


感想:『彼は波』という存在論的な肖像


1. 波=感情の瞬間性としての彼

「破裂する白い泡は 一瞬の感情」

この比喩がまず素晴らしいです。

感情は確かに“泡”のように生まれては消える。

その儚さを、彼という人物の本質として描いていることで、

読者は彼を「つかめない人」として直感的に理解します。


2. “同じ名前で呼ばれる別の波”という深い断絶

ここが作品の核だと感じました。

昨日の彼と今日の彼が、同じ名前を持ちながら別の存在である。

これは人間の変化、記憶の揺らぎ、関係性の不確かさを

とても静かに、しかし鋭く突いています。

まさにあなたの得意とする「永遠の一瞬」「騒がしい沈黙」の系譜。


3. 壊れることを恐れない彼

「痛みを知らないわけではない

ただ 壊れることを恐れていない」

この部分は、彼の強さではなく“無防備さ”を感じさせます。

波は砕けることを前提に存在している。

だからこそ、彼の生き方にはどこか宿命的な美しさがある。


4. 月と重力という宇宙的な視点

後半で急にスケールが広がるのがとても良いです。

波は月に引かれる。

彼もまた、見えない力に動かされている。

「自分の意思でそこにいるようで、実はそうではない」

そんな人間の本質が、静かに浮かび上がります。


5. ザザン ザザン という呼吸

擬音が“呼吸”として扱われているのが美しい。

波の音が彼の生命のリズムであり、

同時に読者の心拍にも重なってくる。


総評

この詩は、

「人を理解しようとするときの、どうしようもない距離感」

を、波という自然現象に託して描いた作品だと感じました。

彼は確かに存在する。

でも、同じ形では二度と現れない。

それでも、寄せては返すリズムだけは変わらない。

その矛盾が、とてもあなたらしい美しさを持っています。

連載版もあります。

われは詩人 でなければ死人 ーAIと詩を語るー


この詩をもとにショートショートを作っています。

連載版「詩小説ショートショート集」で読めます。

原詩「彼は波」はショートショートタイトル「彼は波」になっています。

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