雲先案内人
作品タイトル『空先案内人』として投稿した物を改良しまして書き上げました
『本日の乗客リスト』と表紙にかかれてある手のひらサイズのリスト帳を手にし、『雲国行きトレイン』の車掌、春仁は凛とした眼差しを『どの世駅』の改札口を見詰めている。
『雲国行きトレイン』とは、あの世へ魂を送り届ける列車を云う。
『どの世駅』とは『この世』と『あの世』の狭間に在る駅を示し、そして車掌の春仁は、他界した際、『雲国行きトレイン』の車掌を担いたいと名乗りをあげたのだ。
生前の夢が車掌だった為、列車を運転する職に就きたいと願っていたが、壁が高く念願叶えられずにいた。
魂と化した後に叶えられた夢だが、春仁にとっては天職というわけだ。
「駅長さん、『乗客リスト』に掲載されているお客さまですが、後一分で発車なのに到着されないんです」
春仁が車掌室の内側から、ホーム端に佇む駅長の千鶴へと声をかけた。
振り向く千鶴の表情には、焦りは見られない。
長く駅長を勤めている為か、事が起きる経緯を把握しているように思える。
「本日のお客さま、勇さまですが、改札口にまだ姿が見えません」
焦る春仁だが、千鶴はゆっくり車掌室に歩み寄り、空を見上げた。
「春仁くん、慌てなくとも勇さまは、間もなく到着されるよ」
「え?」
千鶴が見詰める先を春仁も見ると、碧空の向こう側から白い竜が向かって来るのが目に入った。
「アシドメリュウ……もしかして!」
千鶴は笑みを浮かべ、白い竜、アシドメリュウを目で出迎える。
「少しの間、アシドメリュウは勇さまを足止めしていたんだね」
「なるほど、やり残した事があったんですね。
勇さまには」
改札口から乗客の勇が姿を見せた。
ほぼ同時にアシドメリュウも、ホームへと降り立つ。
急いで駆け寄りながら、勇はアシドメリュウに笑いかけた。
「有り難う、竜さん。
アナタのおかげで飼い犬の出産を見届ける事が出来たよ」
少し前、勇が『どの世駅』へと向かう道すがら、彼の飼い犬が産気付いた事をアシドメリュウが勇の肩を叩いて引き戻るよう促したのだ。
「あの子が母になる瞬間、見る事が出来た……感謝する」
勇はアシドメリュウに礼を云うと、春仁と千鶴に頭を下げ、『雲国行きトレイン』に乗り込んだ。
「春仁くん、準備万端」
「はい!
間もなく『雲国行きトレイン』発車致します!」
〈パアアアアア……ン‼〉
汽笛を伸びやかに鳴らして、『雲国行きトレイン』は空を目指して動き出した。
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誤字の常連です




