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雲先案内人

作者: 藤乃花
掲載日:2025/10/05

作品タイトル『空先案内人』として投稿した物を改良しまして書き上げました

『本日の乗客リスト』と表紙にかかれてある手のひらサイズのリスト帳を手にし、『雲国行きトレイン』の車掌、春仁(はるひと)は凛とした眼差しを『どの世駅』の改札口を見詰めている。


『雲国行きトレイン』とは、あの世へ魂を送り届ける列車を云う。


『どの世駅』とは『この世』と『あの世』の狭間に在る駅を示し、そして車掌の春仁(はるひと)は、他界した際、『雲国行きトレイン』の車掌を担いたいと名乗りをあげたのだ。


生前の夢が車掌だった為、列車を運転する職に就きたいと願っていたが、壁が高く念願叶えられずにいた。


魂と化した後に叶えられた夢だが、春仁(はるひと)にとっては天職というわけだ。


「駅長さん、『乗客リスト』に掲載されているお客さまですが、後一分で発車なのに到着されないんです」


春仁(はるひと)が車掌室の内側から、ホーム端に佇む駅長の千鶴(ちづる)へと声をかけた。


振り向く千鶴(ちづる)の表情には、焦りは見られない。


長く駅長を勤めている為か、事が起きる経緯を把握しているように思える。


「本日のお客さま、勇(ゆう)さまですが、改札口にまだ姿が見えません」


焦る春仁(はるひと)だが、千鶴(ちづる)はゆっくり車掌室に歩み寄り、空を見上げた。


「春仁(はるひと)くん、慌てなくとも勇(ゆう)さまは、間もなく到着されるよ」


「え?」


千鶴(ちづる)が見詰める先を春仁(はるひと)も見ると、碧空の向こう側から白い竜が向かって来るのが目に入った。


「アシドメリュウ……もしかして!」


千鶴(ちづる)は笑みを浮かべ、白い竜、アシドメリュウを目で出迎える。


「少しの間、アシドメリュウは勇(ゆう)さまを足止めしていたんだね」


「なるほど、やり残した事があったんですね。

勇(ゆう)さまには」


改札口から乗客の勇(ゆう)が姿を見せた。


ほぼ同時にアシドメリュウも、ホームへと降り立つ。


急いで駆け寄りながら、勇(ゆう)はアシドメリュウに笑いかけた。


「有り難う、竜さん。

アナタのおかげで飼い犬の出産を見届ける事が出来たよ」


少し前、勇(ゆう)が『どの世駅』へと向かう道すがら、彼の飼い犬が産気付いた事をアシドメリュウが勇(ゆう)の肩を叩いて引き戻るよう促したのだ。


「あの子が母になる瞬間、見る事が出来た……感謝する」


勇(ゆう)はアシドメリュウに礼を云うと、春仁(はるひと)と千鶴(ちづる)に頭を下げ、『雲国行きトレイン』に乗り込んだ。


「春仁(はるひと)くん、準備万端」


「はい!

間もなく『雲国行きトレイン』発車致します!」


〈パアアアアア……ン‼〉


汽笛を伸びやかに鳴らして、『雲国行きトレイン』は空を目指して動き出した。












確認しましたが、誤字があれば御指摘をお願い致します


誤字の常連です

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