5 ざまぁの始まりと国王の苦悩
陽が昇るにはまだ早い時刻、国王の寝室に可及の知らせが届いた。
「創造神様からの神託があったとのことで神官が面会を求めております。一分一秒を争う事態とのことです。」
「分かった。すぐに会おう。」
国王は簡単に身支度を整え急ぎ足で執務室に向かう。
いつものように威厳ある態度で答えたものの悪い予感に冷や汗が止まらない。創造神様からの神託など歴史書の中でしか知らない事柄だ。
国王は冷や汗が噴き出るのを隠しながら使者と対面する。
「このような時間に失礼いたします。先ほど創造神様から神託が下されました。一時間以内にこの国の王族と大臣揃って真実の神の神殿に参るようにとの事でございます。」
焦った様子で落ち着きのないの神官が、挨拶もそこそこに早口で神託を語る。
その内容に疑問湧く。なぜ創造神様が告げてきたのだ?創造神様と真実の神様双方に関与する案件ということか。2柱の関与する案件なんて…国王は嫌な予感が止まらない。
「すぐに準備しよう。あとどれ程時間がある?余と数人の大臣だけでも先に向かうが、全員は間に合わないであろうな。」
「それが…。指定時間を過ぎると王城又は貴族の建物が一棟ずつ壊される。以降10分毎に全員が集まるまで続く、とのお告げでございます。」
「なんだと!!」
こうして建国以来の大騒動は幕を開けた―
国王がすべての指示を出し終えて真実の神の神殿に着いたのは指定時間の10分前。
息を切らしながら到着したが、そこには第二王子と大臣二人しかいなかった。予想はしていたが、国を管理するものとしての責任感がまるで無い王侯貴族に情けなくなる。
指定時刻を過ぎた。
集まっているのはたった5人…
あやつら何様だ?神を待たせるほど偉いと思ってるのか?と、イライラしながら皆の到着を待っている国王のもとへ警備の騎士が駆け込んできた。
「陛下、大変でございます!建国の塔が消えましたー!!!」
「なんだとー!ええぃ、早く全員を集めるのだ!!」
国王は心の中で叫びまっくていた。
あやつら、絶対に身嗜みがとか馬車の用意がとかのんびりしてるに決まってる!
こうなったら近衛騎士総動員して迎えに行くしかない。なぜ王が家臣招集の手筈を整えなければならないんだ!
王は偉いんだぞー。神はもっと偉いんだぞー。
そんな、父の想いはまったく届いていないエリック王太子は、父の予想通りのんびりと風呂に入っていた。
「ふう、こんな時間にすぐに神殿へ行けなんて馬鹿げてる。次期国王が美しくない姿で人前に出られるはず無いじゃないか…」
ブチブチと文句を言いながら風呂に浸かっていたが、何やら外が騒がしい。
「エリック殿下、大変でございます!建国の塔が消滅したとのこと。急ぎ神殿に向かうようにと近衛騎士が来ております」
「塔が消えるはずないだろう。まったく…騎士は待たせて…
その先の言葉を発することは出来なかった。
なぜなら、王太子の暮らす王子宮は一瞬で砂の山へと変わっていたから。
室内にいた従者達は砂山の上に立っていた。あまりに非現実的な出来事に一同呆然としている。
「…はっ!殿下はどこだ?」
王太子の側近が砂山を見渡すと、上半身が砂に埋まり足をバタつかせている王太子を見つけた。
風呂に入っていた最中―つまりスッポンポンで下半身丸出しの情けない姿を周囲に晒していた。
なぜか埋まっていたのは王太子だけ…こんな細かい調整をしているところに神の本気を感じる。
一方、息子がムスコを晒した情けない姿でいる事など知らない国王は、一向に集まらない者達にイライラしながら、次々と舞い込んでくる報告を受けていた。神殿内が作戦会議室のような様相だ。
「報告!王子宮が消えて砂の山になっています!」
「!!っ、内部にいた者は無事か?王太子は?」
「全員の無事を確認できております。ただ王太子殿下だけは…全裸でした!」
あっ、息子の現状を知ったようだ…。
テンパって適切な言葉がでなかったのだろうが、一言で分かるナイス報告。
報告を受けた国王は…白目を剥いていた。
驚愕する出来事の連続に疲弊しているところに、息子の全裸報告。思考回路が壊れても誰にも責められない。
だが、そこは一国を背負う者。すぐに動揺を隠して次々と上がって来る報告を聞く体制に戻る。
「ローズスター侯爵家の邸宅が消えました!」
「クローバー男爵家が消失したようです。」
これまで被害を受けた建物に関連するのは、王太子、ソニア、王太子の恋人…聡い者の中には「これはもしや…」と顔色が悪くなり始める者がでてきた。
予想とおり、次に報告があったのは王太子の側近二名の家。
婚約破棄の冤罪事件に関係している者たちは神が何を告げるのか戦々恐々としていた。
ただ最後に報告されたフリジーア公爵家だけ関連性が分からないが…。
次々ともたらされる報告を各々が様々な思いで聞いていると、ようやく神殿に呼ばれた全員が揃ったようだ。
指定された時間から55分…6棟の建物が砂の山となっていた。
ちなみに、最後に到着したのは王太子。
バスローブ姿で喚きながら近衛騎士に引き摺られて来た。性懲りも無く、無事だった建物の風呂に入っていた所を捕まったらしい。救いようのない馬鹿である。
全員が祭壇の前に進むと、真実の神の神像が光り出した。
その神々しい光景と神気に、一同膝をつき頭を下げると、頭の中に声が響いた。
『この国の真実が大きく歪められている。まずは牢に繋がれた少女の真実を見極めよ。そなたら王侯貴族は国民の模範となるべき存在。自らの手で歪みを正せ。…これは最後の忠告である。」
神像が光を失うと同時に、その場に張り詰めていた神気も薄れて静寂が訪れた。
「牢に繋がれた少女…?」
国王がつぶやく。
王はソニアが牢に入れられている事を知らなかった。
だが、彼女が冤罪で投獄されている事を知っている者達は、青褪めた顔で視線を彷徨わせていた。
国王は彼等を見ながら、ふぅーっと大きなため息をついて皆に言う。
「心当たりのある者が大勢いるようだな。急ぎ城に戻り緊急会議を開く。」
「ざまぁ」のさわり部分だけになってしまいましたが、区切りの関係でここまでにしました。
スッキリざまぁを期待していた方ごめんなさい。
次回もぜひよろしくお願いします。




