3 ざまぁの準備は念入りに
「どないな方法で、反省せぇへん奴を見分けるんや?」
「王城ぶっ壊して『反省しない者に神罰をあたえる〜』とか言えば、自分たちで勝手に犯人捜しするんじゃね?」
「えー、面倒だよ。やっぱり国ごと海の底に沈めちゃえば早いよー」
「急がないと国外追放の刑が執行されてしまいますわ。王城を壊すにしても先にあの少女を保護しないといけませんわ。」
限りなく物騒でふざけた会話だが、これでも真剣に議論しているらしい。
いくら神とて、少女ソニアに対して悪意を持っている者全てを見つけ出して反省しているかどうかを見極めるのは…出来なくは無いが相当な労力と膨大な神力を必要とする。今回は国外追放までのタイムリミットもある。実際、神たちにとってもかなりの難題なのである。
「全員を見つけられたとして、どうやって断罪するんだ?王太子はともかく『他人を見下してた』ってだけじゃ大した罪に問えないだろう?」
「だんじゃいちませんよ?」
末っ子ザマちゃんがコテンと首を傾げながら、心底不思議そうなキョトン顔で言う。
「そうだね。ザマちゃんは『ざまぁ』する神様だものね。今回はどうしたい?」
真実の神が、すべて分かっているよとでも言いたげな優しい眼差しで末っ子を見つめながら問いかける。
「えっとぉ、にぃににちんたくしてほちいでしゅ。『うしょつきはだめでしゅよ』って。」
「分かった。僕が神託を下そう。ただ相手が王族だから神官に神託を下しても少し時間がかかるかも知れないな…ふむ、どうすべきか…。」
真実の神との間で話がまとまってきたようだ。
ちなみに、常人であれば舌足らずな幼児…特にザマちゃん…の言っていることは非常に分かりずらいが、皆完璧に聞き取れる。神とはそういう存在―
「えっ、じゃあやっぱり王城壊す?すぐに王様が神殿に来ないともっと壊すぞーって言えば早いかも!」
どーしても王城を壊したい神がいるらしい…。この星に破壊神はいないはずなのに、困ったものだ。
そんな気持ちが通じたのか、ここには居ないはずの神の声がすぐ近くから聞こえた。
「破壊神でーす♪」
「「「 ……。 」」」
「おとうしゃまだー♪」
突然の創造神の登場にフリーズする神たちを尻目に、父のもとにトテトテと走りよる末っ子。こんな時でもめっちゃ可愛い…。
「親父…その登場方法気に入ってんのか…。」
「近頃キャラが崩壊してますわぁ」
一同ガックリと肩を落として、目尻を下げて末っ子を抱き上げる父親を呆れ顔で見つめていた。
「おぉ、こうしてはおれん。急ぐのだったの。
さて、神託についてだが、まずは我が下そう。急いで真実の神の神殿に行くように脅せば…ゲフン…伝えれば早いだろう。真実の神も準備をしておけ。」
「承知しました」
「そして『ざまぁの神』よ。下界に行き、急いで自身の仕事を進めよ。」
「あい!行ってくるでしゅ」
すっごくやる気に満ちた顔で、ピーンっと手を上げてお返事する末っ子。
そのまま下界へ移転しようと動き出すが、美の神から引き止める声がかかる。
「今回の件は私にもおおいに関係がありますわ。ですから私にもお手伝いをさせて欲しいんですの。」
「ねぇねはあとからでしゅ。はんしぇいしないひとで、ここりょがうちゅくしくないわるいひとにこらーってしてくだしゃい。」
それだけ言い残すと、その場からパッと消えて下界へと行ってしまった。
美の神は末っ子の残した、なぞかけのような言葉について考える…。
(心が美しくない人?それをどうやって見きわめればいいのかしら。国民ひとりひとりの考えを見て回るには膨大な時間がかかるわ…とても現実的じゃない…。違う!!ザマちゃんは”考え”じゃなく”心”って言ったのだわ、心すなわち、魂!)
一心不乱に思考を廻らせる美の神。
もう少しで答えにたどり着けそうだが、実行するためには大きな壁があることにも同時に気づいてしまう。
(お兄様とお姉様に手をかしていただければ実行可能だわ。でも…神力が足りない……)
行きついた答えが実現不可能と分かり美しい顔を曇らせる。
と、そこに創造神が、下界に行った末っ子の様子を知らせてきた。
「つい先ほど出て行ったというのに、もう準備ができたようだぞ。
ほっほっほ、初めての仕事だというに優秀だの。」
ウンウンと笑顔で頷きながら、末っ子の様子の優秀さを語る創造神。
だが、急に真面目な顔に変わり、集まった神々を見渡して話しはじめた。
突然に父親の顔から創造神としての顔に変わったことに一同息をのむ。
「よい機会なので皆に伝えておく。
『ざまぁの神』の仕事方法は特殊だ。まず、神側から一方的に行うことはできない。被害者からの依頼を受諾して、始めて仕事に取りかかれるのだ。そしてもうひとつ、他の神と違って仕事に神力を使うことはできない。」
!!!
「そんなバカな…それじゃあ何もできないじゃないか!」
「ほかの神が自分の神力を使ってサポートするってことですか?」
「いや、サポートする神も己の神力を使う必要はない。被害者がこれまで受けてきた苦痛、理不尽などが特別な力に変わるのだ。『ざまぁの神』はその力を行使することができる神だ。
今回でいえば、あの少女、ずいぶん長い間理不尽な扱いを受けていたようだの。王城を1万回以上壊せる力だぞ。ハハハ」
「そんな力が…」
「その力は我々にも使えるのですか?」
「『ざまぁの神』から力の譲渡があれば仕事においてのみ使える。神力は気にせず思う存分サポートするが良い。」
天界にこれまで存在しなかった力の存在に驚く者、考え込む者。いつも賑やかな末っ子の神殿が静寂に包まれている。誕生の時から普通でないと思っていた末っ子だが、想像以上に特殊な存在のようだ。
己の思考に囚われている神々を優しい父親の目で見守る創造神。
その心のうちはわからない……。
「さて、そろそろ可愛い末っ子が下界から戻ってくるぞ。万全のサポートで初仕事を成功させてやろうかの。さぁ準備をはじめよう」
お読みいただきありがとうございました。




