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【連載版】ざまぁの神様は可愛い末っ子  作者: 小内 ゆずか
第2章 テイマーさんとワンちゃんを助けるでしゅ
28/29

25 つーん


アザレア街から戻ってきた神様達は末っ子の神殿で、優雅なティータイム中。


テーブルの上には美味しそうなマドレーヌやクッキーが所狭しと並んでいる。それぞれ好みの飲み物を口にしながらのんびりした時間を過ごしていた。


「ザマちゃん、今回も上手に出来ましたね」


「あのおにいしゃんたち、ちあわしぇになれましゅか?」


「勿論さね。こんなにザマちゃんが頑張ったんだからねえ」


「今後、あの青年に手を出す人間なんていませんから大丈夫ですよ。なんせドラゴンとフェンリルに街を囲まれてしまいますからね。ふふふっ」


今回、お手伝いをしてくれた真実の神、治癒の神、感情の神が口々に末っ子を褒めまくる。ダメ出しなんてしません!終わりよければすべてよし!

こんなに可愛いザマちゃんの笑顔を曇らせるなんて、万死に値する。


だが、そんな万死に値するお馬鹿さん達が、遠見でこちらの様子を伺っている。そう、やらかしちゃった神様達がなんとか末っ子に許してもらおうと、訪問のタイミングを息を詰めて見計らっているのだ。


「ふふふ。せっかくの楽しいティータイムを無粋な視線で邪魔してくるお馬鹿さんがたくさんいらっしゃるようですね」


「はぁ〜、流石に鬱陶しいやねえ」


自身も気になっていたのか、感情の神の言葉を聞いた治癒の神が外部遮断の結界を張る。この結界は自分より力の強い神まで遮ることは出来ないが、こう見えて治癒の神は相当に力のある神様だ。覗いていた殆どの神の視線を遮断した。


ちなみにザマちゃんは視線なんて気にした事がない。だって、生まれてからこれまで常に誰かに見られているから。ストーカーではないよ…たぶん。よく言えば、お母さんが家事をしながら赤ちゃんの様子を確認する見守りカメラって感じかもしれない。


だが今日は見られていたことが気になるのか、モジモジしはじめた末っ子。お菓子を食べるのをやめて、人差し指をつんつんししながら俯いてしまった。


「きらいっていっちゃいまちた……。ごめんなしゃいちないと……。」


「ザマちゃんが誤る必要なんてないよ。悪いのは嘘をついた彼等だからね」


罰は受けてもらわないとねと優しく語りかける真実の神だが、彼の瞳の奥が一瞬キラーンと危険な色に光った。


「その通りさ。口を聞いてやる必要もないさね」


「ふふふ。悪い事をしたら罰を受けなければいけないのです。どんな罰にいたしましょうかねぇ」


三柱の言葉にビックリして顔を上げる末っ子。だって、神様は罰をあたえる側なのに…。

神様が罰を受けるなんて聞いたこともない。


「ばちゅ…でしゅか?」


「そうだよ。ダメなことは神様だってダメだからね。悪い事をしたら怒られて当たり前なんだよ」


「間違えた者をちゃんと教育してやるのも立派な神の務めさね」


「りっぱなかみしゃま……ぼくもきょーいくしゅるでしゅ!」


そっかぁ立派な神様のおつとめなら僕も頑張るぞぉ、とばかりに小ちゃい手をぎゅっと握って、その瞳を輝かせはじめた。

それを見てニヤッと口の端が上がった三柱の含みのある笑顔には気づいていない…。


「ふふふ。では立派な神の務めとしてどんな罰にするか考えるといたしましょう」


感情の神が見惚れるような綺麗な笑顔で言うと、四柱は楽しそうに作戦会議を始めるのだった。



数時間後、談話室には創造神を筆頭にたくさんの神が集められていた。どの神も戦々恐々と青い顔をして立っている。

これから叱られる事は分かっているが、この組み合わせは反則だ。ヤバイ…。


特にヤバイのは、感情の神と真実の神の組み合わせ。二柱とも微笑みながら極限まで、いや極限以上に「もう一思いに殺してくれっーー」と相手が懇願するほどに追い詰めてくるのだ。目上だろうと父親だろうと容赦しない。普段が穏やかな性格なので、そのギャップといったらもう…。


治癒の神は、他者をからかう事をとことん楽しむタイプだ。相手が泣こうが喚こうがお構いなし。


この三柱だけでも冷や汗が止まらないのに、一番怖いのはヤル気に満ちて目を爛々と輝かせているちびっ子だ。この目をしているザマちゃんはヤバイ。何をやらかすかわからない。


(((ザマちゃんに入れ知恵しやがったなーー!!)))


全員が心の中で叫んだが誰も口には出来ない。だって怖いから…。


そんなビクつく神たちを見回しながら真実の神が、いつもの優しげな微笑みのまま口を開いた。


「さて、皆さんは神でありながら、神に対して嘘をつくという愚行をなさいましたね。その被害を受けた我らの可愛い弟は、もう皆さんとお話ししたくないそうです。もう兄、姉、父と呼ばれる事もないでしょうね」


「そ、そんなぁ〜」


「俺たち嫌われたのかっ⁈ど、どうしたら許して貰える⁈」


「つーん」


オロオロと同様する神たちを前に、プニプニの唇をつぼめて、"つーん"とそっぽを向く末っ子。

つーんと口に出してしまっているのがなんとも…。


この仕草は作戦会議の成果。

「いいかいザマちゃん。彼らから話しかけられたら"つーん"てするんだよ」と言われて"つーん"の猛練習をしたのだ。


練習の成果か、末っ子の"つーん"に絶望する神々。お遊戯会の演技にしか見えないわざとらしい仕草なのだが、当事者からは完璧な拒絶の態度に見えるらしい。フィルターがかかっているにしても……大丈夫か神?


「ふふふ。この先ザマちゃんから笑顔を向けられることのない方々は、ひとり寂しく己の神殿に籠って仕事だけをしていてくださいね…未来永劫に」


さらに煽る感情の神の言葉に神々の絶望は加速する。

知らなかった頃ならともかく、愛おしいという気持ちを知り、可愛い弟のいる刺激的な日々を知ってしまった。もう知らなかった頃の生活には戻れない。  

なんでもする、どうしたら許してもらえるのかと泣きながら四柱に詰め寄る。

その様子を面白そうに眺めながら治癒の神が口を開いた。


「そうさねぇ、今回ザマちゃんの為にドラゴンとフェンリルが力を貸してくれた事は知っているね。不甲斐ないお主達に代わって、そりぁ頑張ってくれたさね。私の厳しい指導にも応えて立派に役目を果たしたんだ。そんな彼らを労ってもらうとするかね」


思ったよりも簡単な条件に、ホッと肩をおろす神々だったが、感情の神の言葉に再び絶望に落とされる。


「ふふふ、皆さまには簡単な試練ですよね。では協力してくれたドラゴンの鱗をピカピカに、フェンリルの毛並みをフサフサにしてあげてください。ああ、もちろん試練ですから、神の力は使わずに手作業でお願いいたしますね」


「「「えっっっ?!」」」 


それを聞いて再び固まる神々を横目に、せっせと掃除用のブラシを準備する感情の神。

そして、追い討ちをかけるように真実の神の言葉が続く。


「そうそう、先日は忙しかったので、()()()()()()の時間が取れませんでしたから、このあと個別にお話しさせて頂きます。感情の神兄上も同席してくださいますから、ゆ〜っくりお話ししましょね」


目が笑っていない恐ろしい笑顔で告げられた死刑宣告に神々は戦慄し、その絶叫は神殿の外にまで響き渡るのだった。



天界では今日も剣術の神と算術の神の嘆きの声が響いていた。


「ちくしょー。いつになったら終わんだよっ!鱗一枚磨くのにどんだけ時間かかると思ってんだー」


「でも頑張らないと…。ザマちゃんに話しかけても"つーん"って言われるんです。僕悲しくって…うぅ…ぐすっ」


あれから一ヶ月…。

神々は半泣きになりながら、ドラゴンの鱗磨きとフェンリルのブラッシングを続けていた。

ドラゴンはとにかくデカイ。フェンリルはそこまでの大きさはなくとも数が多い。手分けして、昼も夜も頑張っているが、いまだに終わりが見えない。


「なぁ、お主小さくなれるであろう?すこーしだけでも小さくなってくれんかのう」


「ズルしちゃ駄目だぜ、ソウちゃん。バレたらまたチビ神に幻滅されるぜ。おっ、そこまだ汚れてるぞ、しっかりとピッカピカにしてくれよ。ワッハッハ」


竜王の鱗磨きは創造神がひとりで担当している。さすがに普通のドラゴンやフェンリル達は創造神に恐縮してしまうからだ。その点、竜王だったら遠慮なんて微塵もない。創造神をこき使ってとっても楽しそうだ。



あのあと、真実の神と感情の神から個別に呼び出されて心が折れるまで説教された神達。終わったあとは、創造神でさえ口から魂が出ているのではないかと思える酷いありさまだった。3日寝込んだ者もいたほどの恐怖体験だったとか…。


まぁ、これに懲りて今後は安易に嘘なんて吐かないだろう。それに、試練も説教も確かに辛いが今回の件で一番の恐怖を与えたのは、なんといってもザマちゃん。


嘘を真実に変えてしまう非常識極まりない力を見せつけられた。神でさえ何が起こったのかいまだに分からない。偶然という言葉では片付けられない出来事の連続だった。


だがっ!……それでもザマちゃんは可愛い!それがすべて。可愛い末っ子に嫌われないように神様達は今日もせっせと試練達成に向けて頑張るのだった。



神でさえ何がどうしてこうなったのか分からない今回の出来事。

人間達には今回の騒動の原因が、一本の地球のアニメだったなどとは、知る由もない事だった……。


それでも、末っ子が可愛いのですべて良しっ!

天界も下界も、今日も平和です。


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