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【連載版】ざまぁの神様は可愛い末っ子  作者: 小内 ゆずか
第2章 テイマーさんとワンちゃんを助けるでしゅ
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23 創世の物語


「俺はAランク冒険者パーティー『蒼穹(そうきゅう)』のリーダーをしているアクシスだ」


アクシスが堂々と名乗りを上げると、不満を叫んでいた声は驚きの声に変わる。それ程にAランクでしかもパーティーというのは珍しい存在なのだ。


「蒼穹って…マジかよ…」


「Aランクパーティーって…大陸全体で4組しかいないって聞いたぞ」


ザマちゃんからオジサンと呼ばれてショックを受けていたが、服の上からでも分かる鍛え抜かれた筋肉と貫禄ある佇まいは、なるほど年齢以上の風格だ。強者特有の人を惹きつけるカリスマとでもいうのか、人々は自然と彼の言葉に耳を傾けた。


「皆に現実を見て貰うために、まずはこの街の現状を教えよう。俺達は冒険者ギルド本部からの依頼でこの街のギルドを調査した結果、ギルドと冒険者の許し難い不正が判明した。この街でまともな冒険者はそこにいるテイマーのネロスと見習いの子供達くらいだ」


アクシスがそう言い切ると、冒険者から大きな怒声があがり、一般住民からも困惑の声が飛び交う。


「適当なことぬかすんじゃねぇ!俺たちゃCランク冒険者だぞっ、ネロスに劣るわけねぇだろうがっ!」


「何が不正だっ!よそ者はとっととこの街から出てけっ!」


「不正って…この街は高ランク冒険者ばかりだから、他の街より安全だって聞いてるぞ」


「あのテイマーがまとも?彼は実力も無いのに狡い手を使ってBランクになったんでしょ?」


アクシスは叫ぶ人々を冷たい目で見回したあと、隅に座り込んでいる男に向かって殺気を滲ませた声で話しかけた。


「この街に上位ランクの冒険者が多いのは…実力の伴わない者にも金でランクを売っていたから…そうですよね、オデロン殿?」


名指しされたのは冒険者ギルドマスターのオデロン。彼は青褪めた顔で周りをキョロキョロ見回して、ある人物を見つけると早口で喋り始めた。


「ち、違うんだ、俺はエメラーダ男爵殿から指示されただけなんだ。街に上位ランク冒険者が多い方が住民が安心するからと…」


「…知らんな」


名を呼ばれたエメラーダ男爵だが、一言だけつぶやいて口を噤んでしまった。よく見ると、焦点の合わない虚な目をしている。激痛と空中アクロバットのコンボは、感情の神の力でもすぐには正気に戻れない程のダメージだったらしい。


「責任の所在については、今はどうでもいい。皆に伝えたいのは、この街で上位冒険者の実力を持っていたのはネロスだけだったという事実だ。ネロスはギルドの策略で通常の10分の1以下の報酬なのにも関わらず、街の為に高ランク魔物の討伐を続けてくれていた。ネロスがいなければとっくにこの街は魔物に滅ぼされていただろう。お前たちは、そのネロスを街ぐるみで虐げていたんだよっ!神が怒るのも当然だっ!」


アクシスの声は怒りに震えていた。

思ってもいない現状を聞いて住民達は困惑して互いの様子を伺っている。それが事実ならば神からの罰が下っても仕方ない……いや、だからこそ認めたくないのだ。


「で、でも、そいつはテイマーなんだぞ。そんな実力あるはずがない」


「そうよ。災いをもたらす呪われたスキル持ちなのよ。そんなの嘘よ」


アクシスが怒りに眉をあげて言い返そうとした時、一同の頭に念話が響いた。



『てめーら馬鹿か?』


声と同時に後方にいた純白のドラゴンがズシンズシンという足音と共にこちらに近づいて来た。周囲のドラゴンとフェンリルは波が割れるように道を開ける。

やはり最も神に近い存在、その威厳ある姿に人々の騒めきはピタリと止まる。


「俺は竜王だ。さっきから聞いてりゃー好き勝手なことばかり抜かしやがって。なんでテイマーが呪われたスキルなんだ?そんなこと言ってんのはこの国だけだぞっ。国が自分達に都合のいいように広めた噂だよ。…ったく、どーしょもねーことしやがって…。俺が今からテイムスキルが生まれた理由を教えてやるっ」


竜王は苛立たしげに、念話でなく直接に話し始めた。それは人間には想像もつかない神の視点の出来事。この星の創世の物語だった。



「遠い昔にな、神はこの星を生命(いのち)溢れる場所にしようと世界を創り始めたんだ。最初に大地と海、そして山と川を作って植物が育つ環境を整えた。その後、魔物という生命力の強い種を創り出して世界に放った。俺はそん時に生まれて、神から魔物を統べる使命を与えられた。


…環境が安定するまで一万年。ようやく初めての人族であるエルフが生まれた。神は文明の発展を望んでいたからな。


なのにっ!エルフはぽんこつだったんだよっ。神を(あが)める以外なにもしやがらねぇ。

寿命、容姿、頭脳、身体能力すべてが備わっているせいで、文明を発展させるなんて考えもしねぇ。高性能過ぎて生きていくのになんの苦労もないからな。

しまいにゃ、フラフラと大陸中に散らばりやがって…こいつら種として絶滅しかけたんだぞっ。神が大慌てであちこちからかき集めて、使命を与えることでやっとこさ定住して絶滅を免れたんだ。


…って、おいっ、てめーらなんで喜んでやがんだっ!褒めてねーぞっ!」



今の話しのどこに喜ぶ要素があったのか、何故か嬉しそうに頬を染めているエルフ達。テヘッと舌を出してる者までいる……。

…うん、その様子は竜王でなくても腹が立つ。確かにぽんこつだ。



「あーっと、話が逸れたな…。そんで、エルフの失敗で神は考えたんだよ。それならば少し能力の劣る存在だったら、互いに支え合いながら文明も発展するんじゃないかとな。それで生まれたのがお前たち人間だ。


だが人間は弱かった。弱すぎて何度も絶滅しそうになった。かといって能力を向上させたらエルフと同じになっちまう。

そこで神はスキルという個々に違う能力を与える事にしたんだ。協力し合えば生きていけるようにとな。テイムスキルは、そんな人間達に与えられた最初のスキルのひとつだ。


魔物と人間は相入れない。だが、スキルによって魔物と絆を結ぶことの出来る人間が誕生した……それがどういう事かわかるか?


魔物は人間以上の高い能力を持っているんだぞ。それが人間の味方になってくれるんだ。そんな力を持つテイマーがどうして呪われたスキルなんて言われて迫害されてるんだ?


俺は魔物の王だがな、人間が魔物を殺しても何とも思わねー。魔物と人間は敵同士、生きるために互いに殺し合うのは当然だからな。

だがっ!テイマーと一緒に生きていく事を決めた魔物は別だっ。主人を信じて、人間の為にその力を使おうと決意したものを人間自身が迫害するなんてことは許せねぇんだよっ!」


人々は竜王の語る創世の物語に聞きいっていた。いつも喧しい冒険者達でさえ魅入られたように竜王を見上げて真剣な顔で聞いている。


「さて、この街はテイマーとその従魔を迫害したな。俺はてめーらを許さねぇぞ。

本来ならこの街…いや、国ごと滅ぼすところだ。だが今回は神の使いとして、ネロスを虐げた者への制裁を頼まれて来てるからな。命だけは助けてやるよっ。


俺からの罰として、お前たちに『魔物の敵』と言う称号を与える。お前らが迫害していた従魔は魔物だからな。お前らが先に嫌ったんだからお互い様だろ?


この称号を持った者はあらゆる魔物からひたすらに襲われる。一生街から出ねー事をすすめるぜ。出たら何十何百という魔物が襲いかかってくるだろうからな。


もっとも、俺が怒りに任せて随分と街壁を壊しちまったからなぁ…街の中も安全とは限らねーか。

この街でまともに戦えるのは、てめーらが見下していたネロスだけなんだろ?この街が滅ぶのも時間の問題かもな」


竜王の言葉に人々は絶望の顔を浮かべる――


だが……、神の怒りはまだ終わってはいなかった。フェンリルの(おさ)が絶望のおかわりを言い渡す。


『頭上の光が桃色、赤色の者はそれだけではないぞ。お前達にはその称号をつけたまま従魔の森の奥で暮らして貰う。ああ、それと我が眷族の狼達の殺害に関わった者には我からも『狼の怨念』という称号を贈呈しよう。竜王殿の称号に上乗せして、狼族からはさらに熾烈な制裁を受けることになるだろうな』


「そ、そんな…」


「そんなもん死刑と一緒じゃねーか…」


人々は自分達が何をしてしまったのか、なにが神の怒りに触れたのかをようやく理解した。


何の根拠もない噂を信じていた。

テイマーだから何をしてもいいと思っていた。

彼がこの街を守っていたなんて知らなかった。


どんな言い訳を重ねても、もう遅い…。

自分に待ち受ける未来を想像して、人々は絶望するのだった。


お読みいただき有難うございます。


最初の予定よりもだいぶ長くなってしまいましたが、ようやくこの章も終わりが見えてきました。こんなに書いておいて何ですが、シリアス展開って苦手なんですよねw。早くほのぼの世界に戻りたいです。

もうまもなく戻れる……といいなぁ。

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