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【連載版】ざまぁの神様は可愛い末っ子  作者: 小内 ゆずか
第2章 テイマーさんとワンちゃんを助けるでしゅ
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14 ネロスの回想①

軽いバトルシーンがあります。

作風と違ってしまいそうで悩んだのですが、狼さんたちの頑張りを伝えたくて入れました。


エルフの里(助けられた青年視点)―



少しずつ深い眠りから覚醒していく…


(うん???)


俺は寝台に寝ているのか?

近くに人の気配がするが…大丈夫パトが落ち着いているから危険はないだろう。


「オンッ」


俺が起きたことに気がついたパトが飛びついて来て、その重さに柔らかいベットが俺ごと沈み込む。

凄い勢いでパトが顔を舐め回すのを手で押さえながら体を起こした。


「目が覚めたのか?」


えっっ⁈

女性の声が聞こえると同時に、またもやベットが沈み込んだ。ちょっと待ってー、なんでパトを押し退けて俺の上に乗るんだー!俺の心の動揺など気にも留めずに女性は体をペタペタと触ってくる。


「どうだ痛いところは無いか?体の違和感は?喉は乾いていないか?食事は食べられそうか?」


矢継ぎ早に捲し立てる言葉から、俺の事を心配してくれている事が判りホッとしたが、まずは俺の上から降りてくれませんかね。


「クゥーン…」


ポジション争いに負けてせつなげな声をあげるパトを撫でながら、やっと俺から離れてくれた女性に問いかける。


「ここは?俺は何故こんな所にいるんだ?」


改めて自分の寝ていた部屋を見回してみる。とにかく広い。そして備え付けの家具は俺でも最高級品だと分かる品。寝ていたベットのシーツも絹だろうかとても触り心地がいい。


そして目の前にいる女性。エルフだ!エメラルド色の髪に長い耳、そして見たこともない程に美しく整った顔。人間からは距離を置き"神に愛されし一族"とも呼ばれるエルフが何故ここに?


すべてが非現実的―


本当にいったい何がどうなってるんだ。あまりの混乱に思考が停止しそうだが、彼女の言葉でさらに混乱に拍車がかかる。


「ここはエルフの里にある神の御屋敷だ。ざまぁの神様がお前とその神狼(フェンリル)を助けて連れてきた。それから私がお前達の守護者に任命された。よろしく頼む」


エルフの里?…ざまぁの神様?…フェンリル?…守護者?……。何を言ってるんだ?ダメだ単語の意味さえ分からない。俺は頭を抱えて再びベットへ、ポスっと倒れ込んだ。


「どうした?やはりどこか痛むのか?」


「いや、大丈夫だ。わからない事だらけで混乱しているだけだから」


「わからないこと?……ああそうか!私の名前を伝えていなかったな。私はソフォラだ。お前は何という名だ?」


「……ネロスだ」


わかる、俺には分かるぞー。彼女は脳筋だ!あんなに綺麗な顔だけど脳筋。思考回路が単純化されている種族だ。


熱血でいい人そうだけど、俺に分かるように説明してくれと言っても無理だろうな…。まぁいいや、ゆっくりと聞いていこう。



食事を挟みながら彼女と色々話して、ようやく現状が掴めてきた。

そして悪夢のような出来事が現実に起こった事だと理解してしまった。


どうしてすぐに思い出さなかったんだろう。心に蓋がしてあったみたいだ。いや、本当は分かっていた。ここになぜパトしかいないのか…どうしてあの子たちがいないのかを。

心が現実を受け入れることを拒否していたんだろうな。あまりに辛すぎて。


「そうか…。ミト達は死んでしまったんだな…」


俺の頭の中で次々と絶望的な場面がフラッシュバックしていく。


俺は知らぬうちに涙を流していたらしい。パトが隣に寄り添い、涙に濡れる俺の頬をそっと励ますように舐めてくれていた。



どれくらいの時間泣いていたんだろう。

ソフォラは俺達が落ち着くまで、黙って側にいてくれた。そして、少し落ち着いてきたのを見計らってこう言ってくれた。


「ネロスが嫌でなければ、何があったのか教えてくれないか?話している内に心の整理も出来てくるもんだぞ」


「そう…だな…。聞いてくれるか?あの子たちがどんなに勇敢に戦ったかを…。俺ひとりの胸にしまって置くには重すぎるから」


「ああ聞かせてくれ」


ソフォラの優しい声音に励まされて、俺は目を閉じて記憶を思い起こすように語り始めた。



アザレアの冒険者ギルドはかなり退廃的だ。

3年前にギルドマスターが変わってから変わってしまった。今では冒険者とは名ばかりのゴロつきが幅を利かせている。

優秀な冒険者はギルドに見切りをつけて次々とこの街を去っていた。


この街に3人いたBランク冒険者も今では俺一人。それでも俺は爺ちゃんとの思い出の詰まったあの家を捨てることが出来ずにこの街で暮らしていた。


あの日、ギルドから緊急指名依頼を言い渡された。緊急指名依頼は別に珍しいことじゃない。なんなら俺の依頼のほとんどが緊急指名依頼だ。


厄介な依頼を安い金額で俺に押し付けられる便利な方法なんだろう。俺もそれを分かっていたが、特に文句も言わなかった。

食べていけるだけの稼ぎがあればいいし、何より魔獣の森に面した街だというのにBランク冒険者は俺しかいないのだ。街の人々の安全の為にも魔物の間引きはかかせない。


幸い俺にはある程度の強さがあった。テイマーだが剣も魔法もそれなりに使える。そして頼りになる6頭の狼達がいつも一緒にいてくれる。おかげで依頼を失敗した事は一度も無かった。



「おい。緊急指名依頼だ。Aランクの魔物らしいからな、お前の他にCランクパーティーを3組付けてやる。失敗するなよ」


横柄なギルド職員がそう言って依頼書を渡してきた。

はぁ〜面倒だな。Cランクパーティーと言えば聞こえがいいけど、あの人達めちゃくちゃ弱いし邪魔ばかりするんだよな。まぁ、いつもみたいに素材は全部渡すって言えば大人しくしててくれるかな。


「おい、ネロス!今回は俺たちが一緒に行ってやる。当然リーダーは俺だ」


どうしたものかと思案していたら全員集まったようだ。3パーティー15人…俺の事を目の敵にしてるうるさいのばっかりじゃないか。ついてないな俺。


「素材分配の権利は当然にリーダーである俺にある。分かってるな?」


「ああ。個人の依頼料だけもらえればいいよ」


この人達は、いかに楽して稼げるかしか考えていない。何度、討伐した戦利品を強奪されたことか。なんなら俺がギルドに持ち帰った魔物さえ自分達が倒したんだと言い張るくらいには面の皮が厚い。


まあこの人達にも生活があるんだろうし、金にも困っていないからいいんだけどね。

ただ、俺がBランクな事が気に入らないのか、顔を見るたびに突っかかってくるのはやめて欲しいな。


冒険者はマウントの取り合いだと誰かが言っていたけど、マウント取ってなんの得があるんだろうね。


そんな事を考えているうちに魔物が目撃された場所までやってきた。


「おいネロス、その犬っころに魔物を探させろ」


いやいや、もう周囲に散らばって索敵しているから。ここまで来るのに一度も魔物に襲われてないのをおかしいと思わないの?

まぁこの人達に言っても無駄だから言わないけど。


「ヴゥゥー」


パトが唸り声を上げ、右方向からミトの警戒の鳴き声が聞こえてきた。俺は一瞬で戦闘に気持ちを切り替える。


「右だ!来るぞ」


木の影から現れたのは見たことが無い大きさの三つ目熊だった。通常は4m程だがこの個体は6mはあるだろう。これは簡単には倒せないな。


後衛の冒険者が弓を放つが、太い腕で難なく振り払われる。前衛は…前に出て来る気配も無い。何しに来たんだろうねぇ。


「俺達が前に出る。パトいくぞっ」


「オンッ」


牽制にファイヤーボールを顔目掛けて放つが躱わされる。こんな巨体だというのに速い。ミト達が取り囲み牙をたてようとするが、鋭い爪を躱わすのに精一杯で近づく事が出来ないでいる。


こいつ強い―


ただ大きいだけでなく、通常の三つ目熊とは比較にならない強さだ。


パトが自分に注意を引き付けようと正面から攻撃を仕掛ける。パトの素速い動きに翻弄されている隙を突いて、右腕になんとか剣が届いたが浅い。黒い毛皮は硬く大きな傷をつける事はできない。


持久戦で少しずつ削るしかないな。

そんな事を考えていると後方から矢が飛んできて三つ目熊の左肩に当たった。しかし、硬い毛皮に阻まれてほんの少し皮膚を傷つけた程度ですぐに抜け落ちる。


「やったぜ。見たか?俺の矢が当たったぞ」


後ろで見学していた者達だ。

前衛が接近戦をしている最中に矢を放つなんてバカなのか?あの程度の腕前では味方を傷付ける危険があると分からないのか?矢も威力が足りなくて刺さってないだろう!


「やめろっ!味方に当たったらどうするんだ!」


「なんだとー。俺様の腕をバカにするのかっ!」


ダメだまずい。事故が起こる前に倒し切らないと。そんな俺の気持ちも知らずに次々と矢を打ち込んでくる馬鹿ども。


「やめろと言っているだろうっ!」


ミト達も飛んでくる矢を避けながらの攻撃になり、思うように動けないでいる。


「ギャン!」


そんな時事故は起こった。

振り下ろす腕を避けたガトに矢が突き刺さった。俺は地面に倒れるガトのもとに慌てて駆け寄ろうとした。三つ目熊はそんな一瞬の隙を逃さず、俺の頭上に鋭い爪を振り下ろす。


ダメだ、避けきれない。

そう思ったと同時に上半身を突き飛ばされた。


「レトーーー!!」


俺を突き飛ばすように、俺と振り下ろされる腕の間に飛び込んできたのはレトだった。首から腹にかけてをザックリと鋭い爪に引き裂かれている。


「うおぉぉぉー」


倒れたレトの姿をみて頭に血が昇った俺は三つ目熊に正面から飛びかかっていた。振るわれる腕を避けて左足を切り付ける。

相手が一瞬よろめいたのを見逃さずパトが飛び上がり首元に噛みついた。

ミトとコトも俺の意図を汲んだのか足元に攻撃を集中させ、セトが背後から飛びかかった。


「グオォォォォォ」


三つ目熊が堪らずに叫び声をあげたその時、背後にいる冒険者達から悲鳴があがった。


「ギャァァァ!」


「もう一匹いたのか!うわぁぁぁー来るなー」


「ダメだ逃げろ〜」


背後からもう一頭三つ目熊が現れた。

冒険者達はなんとか応戦しようとするが全く歯が立たず、散り散りに逃げていく。


最悪だ…

現れた三つ目熊は普通サイズだが、こちらの大きい方も傷はつけたものの致命傷にはなっていない。

Aランク魔物二頭を相手にこの戦力で勝てるのか?


逃げる?それは出来ない。矢が刺さってはいるがガトはまだ息があるんだ、助けなければ!レトの亡骸だって、あいつらの餌にさせる訳にはいかない。


俺は覚悟を決めた。


「かなり厳しい戦いになるが一緒に戦ってくれるか?」


「「「「オンッ」」」」


あたり前だと返事をしてくれる4頭。


「頑張ろうな。でも、もしも俺がやられたりもうダメだと思ったら迷わず逃げてくれ。約束だぞ」


こちらを警戒しているのか動かずに睨みつけている三つ目熊達。俺達は決死の覚悟で二頭に向かっていった。



正直、そのあとの戦いの内容は頭に霞が掛かっているかのようで、よく思い出せない。


無我夢中だった…

どれだけの時間戦っていたのか…

ただ次々と傷つき倒れていく仲間を見るのは…悪夢のような長い長い時間だったことだけは覚えている。


二頭の三つ目熊を倒し終わった時、動いているのは俺とパトだけだった―


お読みいただきありがとうございました。


次回もうちょっとだけ回想が続きます。一話でまとめたかったのですが、長くなり過ぎたので区切りました。次話もぜひお読みください。


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