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【連載版】ざまぁの神様は可愛い末っ子  作者: 小内 ゆずか
第2章 テイマーさんとワンちゃんを助けるでしゅ
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13 エルフって奴は…


「ふぇんのおじしゃーーん」


目の前に現れたモフモフにヒシッと虫のようにしがみついた末っ子。

大好きなフェンリルのおじちゃん。遊びに行く度に背中に乗せてくれるとっても優しいおじちゃんが来てくれた!


知らない森の中、女エルフに責められて相当に不安だったこともあって、銀色の毛に埋もれて顔をグリグリして離れない。


「こ、これは神狼(フェンリル)の長殿!」


「なぜ、このような所に?」


慌てて礼を取るエルフ達だったが、フェンリルの長は完全無視。大切な神に暴言を吐いた者と話す事などないと言わんばかりだ。


『よしよし、怖っかったのか?そんなにしがみついてたら話もできんぞ』


「おじしゃんはおしゃんぽでしゅか?」


『ああ精霊が騒いでいたので見回りしていたら、どこぞのエルフが捲し立てる声が聞こえたのでな』


そう言ってエルフ達をひと睨みする。

眼光の鋭さにすくみあがる2人は急な展開に戸惑っている。


『さて、小さき神よ我に手伝えることはあるか?』


「か、か神だと⁈…」


「やっぱり…だから僕が止めたのに…」


囁き合うエルフ達の顔色がどんどん青褪めていくことなど気にも求めずに説明を始める末っ子。


「おにいしゃんたちたしゅけるでしゅ。けがちたからまだうごけないでしゅ」


『なるほど』


フェンリルの長はそう言って倒れている者達の方を見る。と、白い狼に目をやり驚きの声を上げた。


『なぜフェンリルの幼体がここにいるのだ⁈』


「へんでしゅか?」


『我らフェンリル族の住まいは天界。神からの使命を得たものだけが神獣として下界に来られるのだ。しかもそれは覚醒体(成体)のみ。……まあ良い、あとで調べてみよう。

して、この者達を街の近くまで連れて行けば良いか?』


「だめでしゅ。わるいひとがいるでしゅ」


末っ子の間髪をいれぬ返答に考え込むフェンリルの長。

神に暴言を吐いた者共に頼りたくはないがこの森で人間の休める場所は限られている。仕方なく少し離れた場所で青い顔で固まっているエルフをギロリと睨みながら嫌そうに言う。


『おい!そこのエルフども。彼らを里にて保護せよ』


「か、かしこまりました」


鋭い言葉に飛び上がった2人はすぐさま承諾した。しかし、不審そうに女エルフを見る幼児が待ったをかける。


「おねーしゃんいじわるでしゅ。いってへーきでしゅか?」


そう言われた女エルフは顔面蒼白。神だというこの子に自分は何と言ってしまったか…過去をなかったことには出来ない。

が、そこで気の弱そうなもう一人のエルフが急に怒涛の勢いで喋り始めた。


「ご、ご安心くださいっ!里の者達は穏やかな者ばかりです。このソフォラが飛び切り馬鹿で短気で、思い込みが激しい馬鹿なだけです。是非ともお越しくださいませ。是非っ!」


馬鹿を二回も言った…女エルフに何か恨みでもあるのか酷い言いようだが、彼女が例外なだけで里は安心だと必死に説明する。


「んー、ちんぱい…。いっしょいくでしゅ」


それでも納得いかなかったのか、末っ子も付いて行くことにしたようだ。胸を叩いて"任せろ"ポーズで張り切り始めた。

こうしておかしな組み合わせの一行はエルフの里に向かうこととなったのだった。




その様子をハラハラとしながら、隠れて見守っていた神が二柱いた。


「一緒に行くつもりらしいね…。止めるべき…だよね」


「あの子はなかなかに頑固さね。一度決めたら聞かないだろうよ」


「…だよねぇ。コレって下界に連れて来た僕が怒られるのかい?」


「すでにモニター越しに怒り狂ってるさね。諦めな。ほら私らも行くよ!」


「はぁ〜〜」


迷い魂を送り届けに行っただけの自分が何故こんな目に合うのか…。風の神は大きな溜息をつきながら一行の後を追うのだった。




エルフの里は魔獣の森の中にある。

ここには、この世界にある3本の世界樹のうちの一本が存在する。冥界の木ほど大きくはないが、この森の木々よりも遥かに高く、堂々とした姿で里を見下ろすように聳え立っていた。


エルフとはこの世界樹と精霊達の管理を神より任されている誇り高き一族だ。


そう、誇り高き一族のハズなのだが……



『神とこの者達の休める場所を用意せよ』


その背に神を乗せたフェンリルの長は、集まってきたエルフ達に命じた。


「よ、ようこそお越しいただきました。何と何と神々しい!この日の出来事はエルフの里ある限り語り継がれましょうぞ。い、いかん涙が…うおぉぉぉ〜」


「あぁ可愛いらしくも光輝くあのお姿…まさに奇跡…」


「あぁぁぁ感動で涙が止まらないぃぃ」


「サンフラワー王国へ御降臨されたと聞いて羨んでたがこの目で見られるなんて…うぅゔ生きでて良かっだぁー」


歓迎を通り越して、感激で泣き叫ぶエルフ達。

そうエルフ族とは神様大好き一族。好き過ぎてもはや迷惑。神も裸足で逃げ出すレベルのウザさだ。


神狼(フェンリル)に乗った神様を見て、漏れなく狂乱状態―


『やかましいわ!小さき神が驚かれるだろ。早う屋敷に案内せい!』


「神の御屋敷にご案内いたします。ああ、私が神様をご案内出来るなんて人生最高の誉れ…我が人生に悔いなし」


『はぁぁぁ〜。エルフって奴は…』


ぐったりしているフェンリルの長とは対照的にエルフの里の景色が珍しいのかキョロキョロしている末っ子。大騒ぎのエルフ達に最初は驚いていたものの、"へんなのー"で終了。やはり大物だ。


取り囲むエルフを掻き分けながら、神の屋敷と呼ばれる建物にようやく辿り着いた。青年らの看病も頼み、やっとひと息。末っ子は出されたリンゴジュースがとっても美味しくてご満悦。

ちなみにフェンリルの長は大きさを自由に変えられるので、建物に入れるサイズになっている。


しばらくすると族長が森で会った女エルフを伴いやってきた。


「この者が御身に暴言を吐いたと伺いました。神様だと気が付かなかったなどとエルフとして言い訳にもなりません。このソフォラを正しく教育できなかった事は、この里の長である私の責任でもあります。ソフォラと共に何なりと罰をお与えください」


そう言って深く頭を下げてきた。

隣で共に頭を下げているソフォラの顔は青を通り越して白くなり、今にも倒れてしまいそうな様子だ。


「おねえしゃん、おはなちはしゃいごまでよくきかないとだめでしゅよ」


かなり聞き取りづらいが、ソフォラにはきちんと伝わった。

あの時、きちんと話を聞いていたら…。今思えば一緒にいたポトスも必死に私を止めようとしていたではないか。どうして私はこうも思い込みが激しいのか、自分が嫌になる。


「はい。誠に申し訳ございませんでした。私の死を持って償います。しかし、族長はいつも私を諌めてくれました。これは私ひとりの責任です。どうか族長にはお咎めなきようお願いいたします」 


「ちんじゃだめでしゅ!いのちはだいじなんでしゅよ」


彼女は涙を流しながら、自分ひとりを罰してくれと懇願する。

しかし、命を粗末にする物言いにプンプンする末っ子。そして何か考え始めた。

緊迫した場面ではあるが、短い腕を組んで何度もフムフムと頷くその姿は可愛い。本人的には、今日会った死魂(しこん)の神のカッコいい姿を真似しているつもりらしい…。


「おねえしゃんはあのおにいしゃんとわんわんをまもってくだしゃい。ぞくちょーしゃんはわるいことちてないからあやまらなくていいでしゅよ」


その言葉を聞いてソフォラは歓喜に震えた。

ああ、なんと寛大な神様だろうか。あの様な失態を犯した私を咎める所か使命までお与え下さるとは。


「なんとっ、なんと慈悲深い…私の全てをかけてその使命を果たすことをお誓い申し上げますっ!」


ソフォラの足をも舐めんばかりの勢いに驚き、隣のモフモフにしがみつく末っ子。

それに気付くこと無く、エルフには珍しい熱血直情型のソフォラはメラメラと闘志を漲らせるのだった。


こうして、青年の預かり知らぬ所で守護者が決定してしまった。

そして、この熱血守護者は生涯に渡り青年に付き纏う…もとい、見守る事となるのだった。




末っ子達が去ったあとの森―



「ここで血痕が終わってるよ」


「ここで力尽きたのか?しかし、遺体も魔物に食べられた形跡もない…もう少し周辺を探ってくれ」


Aランク冒険者パーティー『蒼穹(そうきゅう)』の5人は、三つ目熊との戦闘跡地で大怪我をしていた3人の冒険者から事情を聞き、消えたテイマーを探していた。


「リーダー!複数の人間の足跡があるぞっ。大きな獣の足跡も!」


「こ、この大きさは…!この辺りにこんな大きな四つ足の獣は居ないはずよ。複数人の足跡といい、ここで何があったの?」


何が起こっているのか…。

リーダーのアクシスは眉間に皺を寄せて考え込んでいた。


彼等は冒険者ギルド本部から内密の要請を受けてこのアザレアの街のギルドの調査に赴いた。

街に到着したとたん三つ首熊の討伐に失敗して逃げてきたと言う冒険者に出くわし、その話しに違和感を感じて現場に駆けつけたのだ。


「だいたい、さっきの冒険者の話しだっておかしかったろ。言っている事と現場の状況がまったく噛み合わない」


「自分達が三つ目熊を倒したって言うけど、あんなチンピラみたいな奴等に倒せる訳がない。あんなのがCランク冒険者だなんて笑っちゃうね」



「探索はここまでにしよう。…嫌な予感がする」


アクシスの最後の呟きは誰にも聞こえなかった。

だが、Aランク冒険者として修羅場を潜り抜けてきた彼等は一様に不穏な何かを感じつつ、言葉少なに街へと戻っていった。


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