10 嘘つき神様
新章開始です。
よろしくお願いします。
「グスッ、グスッ…」
いつも元気いっぱいの末っ子が、シクシクと泣いてベットから出てこない。
「おい!何があったんだ!」
「地球のバカ叔父が、ザマちゃんがアニメを気に入ってるからって、よりによってアレを送ってきたのよ。」
駆け込んできた剣術の神様に、他の神達がプンプンしながら説明する。寝室からは悲しげな声が聞こえてくる。
「グスッ、ぱとらっちゅ〜〜かわいちょうでしゅ〜〜」
「まさか!…アレか…」
「ええ、アレよ」
「アレはあかん。メンタルにクリティカルで突き刺さるんや。ワイも3日ほど浮上できんかった」
以前、地球の叔父―創造神の兄が送ってきた地球のアニメが天界で一大ブームを巻き起こしたことがあり、多くの神が名作と名高いあの少年と犬のアニメを観ていた。
その衝撃の結末のやるせなさを知っている神々はどうやって慰めようかと頭を抱える。
そんな時、ヒュンと現れたのは頼れるお父様。
が、末っ子にこんな事を言い始めた。
「あの少年と犬の魂はの、あちらの星ではまた不幸になるかも知れないからと、こちらの世界で引き取った。今はこの世界で幸せに輪廻を繰り返しておるぞ。だからもう悲しむことはないぞ。」
でまかせ来たー
皆の凍えるような冷たい視線が父に突き刺さる。神が創造神がそれでいいのか、と。
「ほんとでちゅか?」
「ああ、本当だとも。その魂を見つける度に、幸運の神が加護を与えているからいつも幸せじゃ。のう幸運の神?」
創造神による嘘八百。
そして、その流れ弾があたってしまったのは幸運の神。引き攣った顔をしながらそれを打ち返す。
「え、えぇ。そうよ。見つけた神が私に知らせてくれるの。そうよね!皆さん。」
全員被弾の危機―
「だれかみつけましゅたか?」
当然のことながら、末っ子は周囲の神達を一人一人の顔を覗き込むように見つめて問いかけてくる。
まだ涙の残るその無垢な瞳に耐えられなくなった最初の脱落者は鍛治の神。
「か、かなり前じゃがワシも見つけた事があるぞ。飼い犬と幸せに暮らしておった。そ、そう言えば、算術の神も以前見つけたと言っておったのう。」
「えっ、え、ぼ僕⁈えっとー、見つけたからちゃんと幸運の神に報告したよ。えっと…幸せそうだったよ……たぶん…」
こうして次々と撃沈されて全員漏れなく創造神の"嘘"の共犯者となった。あの無垢な瞳をもう一度曇らせることのできる勇者はここにはいなかった…。
(((なぜ今日は真実の神がいないんだ〜!)))
皆、心の中で叫んでいた。彼さえいれば創造神でさえ正論でぶった斬ってくれたのに…。そして有無を言わせぬあの微笑みで「あれは架空のお話しなんだよ」と優しく末っ子を諭してくれただろうに。
自分のことを棚に上げて…不甲斐ない神達だ。
なぜ神達がこれほどビクビクしているかと言うと『嘘は己に返ってくる』ということを、よーく知っているから。
しかも相手はこの世界の非常識をギュッと丸めて形にしたような幼児。何気なく放った弾が巨大爆弾となって返ってきてもおかしくない。
一方、末っ子は皆の話しに納得したのか涙も引っ込み、気持ちも浮上して来たようだ。
というか何やらヤル気に満ちて小さな手には拳まで握られている。
「ぼくもみちゅけるでしゅ!」
はい、そう来ますよねー。
皆一様に顔色を悪くしながら次の言葉を待つ。続く言葉は想像した通り。
「げかいにいくでしゅ!かわいしょうになってたらたしゅけるでしゅよー!」
そう。あの物語は末っ子の仕事そのもの。
小さなハートにどストライクの案件だった…。
理不尽をこれでもかと見せられて、ざまぁ心を芽生えさせられる…いわば「ざまぁのバイブル」と言っても過言ではない物語。あれが子供の教育用アニメだという地球とはどんな世界なのか心配になる。
燃える末っ子を横目でみながらコソコソ話す神達。
「本当にあの魂が居る訳じゃないし、下界に行きたいって言うのを宥めればそのうち忘れるよ。」
「そうだといいなー」
「もう帰っていい?疲れたんだ、なんだかとても…嫌な予感がするんだ。」
そんな神達の予感は的中する―なんせ『神の予感』なので。
この時すでに特大爆弾炸裂までのカウントダウンは始まっていた。誰も知らぬ間に…。
末っ子も復活した事だしお茶でも飲もうと、皆はテーブルを囲んでいた。
今日のお茶請けはクッキー。
少し堅かったのか、カジカジとクッキーを食べる末っ子の小動物のようなその姿に、ささくれ立っていた神々の心も和んでいく。だが……
「どうやったらあのたましいわかりましゅか?」
そんな緩んだ雰囲気を一気に緊張へと戻す末っ子の質問。皆でいっせいに主犯である創造神を見る。その顔は無言で語っていた「お前が責任待って答えろよ」と。
「し、自然とわかる。会えば分かるのだ。な、なんせ神だからの。」
嘘に嘘を重ねていく創造神。
あたふたするその姿は神の威厳どころか父の威厳も皆無。
「ぼくもみちゅけにいくでしゅー」
「モ、モニターからでもわかるわ。そのほうが色んな場所を見られるでしょ」
「それに魂は眠っている最中かも知れないよ」
下界行きを阻止しようと、不本意ながら嘘を重ねるしかない哀れな神々の姿。
「ねんねでしゅか?」
「そうだよ。魂はこの天界で次の転生までの間眠っているんだよ」
「んー。こんどしょこにいってみたいでしゅ」
「よし。今度行ってみようか」
なんとか気持ちを反らせたことに一同ホッと胸を撫で下ろす。
そんな時、開け放した窓から小さい光がフラフラと入ってきた。
蛍のように頼りないその光は末っ子に近づき、不思議そうに見つめながらも差し出した手のひらにフワリと乗る。
「あらあら大変。こんな所に魂が出てきたら消えちゃうわぁ。」
「今にも消滅しそうだね。」
小さな小さな魂、その光は弱く今にも消えてしまいそう。
皆の言葉を聞いて末っ子は大パニック。魂の乗った手を動かさないように器用にジタバタしてる。
「きえちゃいましゅ!どーちよー」
「落ち着いて。さっき言ってた魂の寝床に戻せば助かるよ」
「た、たすけるでしゅ!」
魂の光を手のひらに乗せて叫ぶ末っ子を抱きかかえて、急いで移転しようとした風の神を創造神が引き止める。
「待て。その魂に移転は耐えられん。末っ子もいきなりあの場の空気は辛かろう。今結界をかける」
そう言って末っ子と小さな魂を包む結界をかける。
それを確認すると風の神は末っ子を連れて、パッと消えた。
静かになった室内で誰かが言った。
「まさに魂の話をしている場に迷い魂…。これって偶然なの?」
「地球に『フラグ』って言葉があるの知ってるか?」
「…まて。どこでフラグを踏んだんだ⁈」
「親父の嘘からじゃねーの」
「「「……。」」」
室内は再び静寂に包まれた。
神が初めて感じる得体の知れぬものへの不安―
一同身を震わせて二人が消えた空間をただ見つめていた。
この話しに出てくるアニメを知らない方がいたらごめんなさい。最後に主人公の少年と犬が死んじゃう悲しい昔のアニメがあるんです。その切なさったらもう…大人でも号泣ものなのです。ザマちゃんが観たのはそのアニメです。
ストックの関係もあるので、ここから1日おきの更新とさせて頂きます。
どうぞ、次話もよろしくお願いします。




