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第五話

家の外に出て、雪の準備が終わるのを待つ。ちなみに言っておくと、雪の自宅は僕の家の隣である。同居しているとかはありえない。それは普通じゃないからね。それにもしそうだったとしても、そのことがバレたりしたら余計に目立ってしまうだろう?


僕の家の大きさの何倍もある、巨大な日本家屋(雪の自宅)を見る。うーん…何度見ても、やっぱり大きいね。たしか雪の祖父が、道場も開いていたはずだ。それもあって、敷地が広いんだろう。その分を除いても、めちゃくちゃ大きいけどさ。


空には満月が浮かんでおり、僕を懐かしい気持ちにさせる。満月の夜に、僕と雪は出会ったのだ。過去を思い出していると、準備が終わったらしい雪がやってきた。その姿は先ほどまで着ていた和服ではなく、なんというか清楚な洋服を着ていた。語彙力が壊滅的で申し訳ないが、確実に言えることがあるとすれば、雪は可愛いということだ。


「来栖様、お待たせしました。それで…どうでしょう?」


僕はここでなにが?と聞くほど、バカではない。何を聞かれているのかは、理解しているつもりだ。それに邪神であっても敵対者はともかくとして、従順な使徒には優しいと思っている。だから僕は雪にこう言おう。


「似合っているよ、雪。普段も可愛いけれど、今日はもっと可愛いね。」


自分で言っておいて、なんてクサいセリフなのだろうとは思う。しかしなんだか雪には、こんなセリフを言ってしまうのだ。それだけではなく、かなり甘やかしてしまう。まぁそれに関しては、日頃の感謝の意味も含まれているのだが。


顔を赤くして照れている雪に向けて、右手を差し出す。一瞬驚いた顔をするが、すぐにパァッと顔を明るくした。雪は差し出された僕の右手を強く握る。それに対して僕も雪のことを離してしまわないように、ギュッと握り返す。


「さぁ、いこっか。」


そう言って、僕と雪は昔のように肩を並べて歩き出した。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


「いやー、美味しかったね。久しぶりにあんなぜいたくをしたよ。雪はどうだった?」


お寿司屋さんを出て帰り道を歩いていた中で、僕は雪にそう聞いた。半歩ほど前を歩いている雪の顔は見えないが、その代わりに嬉しそうな声音が僕の耳に届く。


「とても美味しかったですよ。機会があるのなら、ぜひまた行きたいですね。もちろん来栖様と一緒に…ですよ。」


「お気に召したようでよかったよ。それじゃあそろそろ…。」


帰ろうか…そう言おうとした僕の口は動きを止める。僕は…いや、僕たちは視線をうっすらと星が浮かぶ空へと向ける。それはひとえに近くから、膨大な霊力を感じ取ったからである。


霊力…それを簡単に説明するのならば、この世界にしか存在しない独自のエネルギーだ。勇者くんの転移した世界には、魔力というエネルギーというものがあったように、この世界にもそういうものが存在するのである。


そして勇者くんの世界の住人が魔力を使って魔法を起こすように、この世界の住人は霊力を使って霊術というものを使う。まぁあくまで神がそういう呼んでいるだけなので、統一的な呼び方はないのだが。具体的に言うと陰陽術とか異能、超能力などいろいろな呼び方があるわけだ。


「さて、どうしよっか。雪はどうしたらいいと思う?この霊力量だと、結構強いやつが出てきてると思うんだけどさ。まぁ今の雪なら倒せるだろうけど。」


一瞬考えるような様子を見せるが、すぐに決意を固めたようで雪はコクリと頷いた。うんうん、勇敢でなによりだ。


「それじゃあ、潰そっか。」


僕の影が蠢いて、肥大化していく。影が雪の影を包み込むと、すぐにもとのサイズへと戻っていく。今のは影を通じて、雪に認識阻害をかけたのだ。これをかけておけばよほどのことがない限り、正体がバレたりすることはないだろう。


雪が手刀で、空をなぞる。すると空間に狭間が開き、その奥から深淵がこちらを覗く。狭間へと雪が右腕を突っ込むと、なにかを探すように腕を動かした。


数秒後、狭間から腕を引っこ抜く雪。その手には一振りの黒刀が握られていた。しかしその黒刀はただの刀とは思えないほどのエネルギーが秘められている。ちなみに、黒刀の正体は僕が与えた神器だ。


最上位の神である僕が造ったため、神器として最高峰の性質を持っている。つまりチートアイテムってわけだ。


「お待たせしました、来栖さま。」


準備ができたことを伝えてくる雪。改めて雪を見るけど、やっぱり過剰装備すぎないかな?手にしたら人類最強になれそうな刀に、使徒としての能力をふんだんに使った強化…うーん、過剰戦力だね。


「あの…なにか粗相をしていましたでしょうか?」


コテンと首を可愛らしく傾けて、そう聞いてくる雪。うーん、まぁいっか。雪が怪我したりするのは嫌だからね。


僕は雪に甘いのかもしれないと、改めて実感させられた瞬間であった。



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