プロローグ
「おい、勇者!!それは我が先に狙っていた弁当だぞ!!」
「はっ、知るか魔王。残念だったな。ラスト1個は俺がもらった!!」
「くそぅ。どうして、どうして世界は魔王の我に厳しいのだ!!こんな宿命は受け入れられぬ。」
「ちょっ、魔王。奪おうとするのはなしだろ!!さすがに見苦しいぞ。わかった、わかったから。半分あげるから、それで我慢してくれ。」
「むぅ、嘘じゃないな?もし嘘だったとしたら、三千世界の塵にするからな。」
「わかってるよ。まったく、しょうがねぇやつだな…お前は。」
そんなことを僕の目の前で繰り広げているのは、瀬ケ崎高校1年3組の二人組。勇者と呼ばれているのは荒垣勇斗、魔王と呼ばれているのは藍魔由衣だ。
二人は瀬ケ崎高校の名物コンビと言われており、とても仲が良いカップルだと思われている。勇者や魔王と呼び合っているのも、遊びの範疇だろうと学校中の生徒たちが思っている。
しかしクラスメイトたちは知らない。彼らが何千何万もある世界の一つで殺し合った勇者と魔王であることを。勇者の方はもともとこの世界の住人で、中学最後の春休みで異世界に飛ばされた。そこで魔王…今の藍魔由衣を殺して、こちらの世界へと戻ってきたのである。
魔王の方は勇者に殺された後、こちらの世界へと転生してきたらしい。時間軸が違うのは、おそらく魂が世界を渡った時に通った穴が違ったのだろう。
なんでそんなことを知っているのかって?あぁ、自己紹介がまだだったね。僕の名前は神崎来栖。そして邪神と呼ばれている旧神族の頂点に位置する神だ。
これはライトノベルでよくある勇者と魔王が現代で再会して、ラブコメになるお話…の近くで日常を過ごす僕の物語だ。




