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軍学校の卒業

これは、戦場を知略で支配する者たちの物語。

圧倒的な戦力差――兵力5,000 vs 10,000、戦車50 vs 150。

誰が見ても、勝負は決している。だが、戦争とは力だけで決まるものではない。

士官学校を主席で卒業した魔理沙は、奇抜な発想と大胆な戦術で戦場を掌握する天才。

その幼馴染である霊夢は、冷静な判断と堅実な戦術で着実に勝利を積み重ねていく。

だが、本当の戦場は試験とは違う。

戦争の現実を目の当たりにし、彼女たちは戦術家としての限界と向き合うことになる。

勝利か、敗北か。

知略を尽くして生き抜く者だけが、戦場を制する。

戦術と軍略を駆使した戦争小説、ここに開幕!

起床ラッパよりも早く、砲声が鳴った。

遠く、訓練区域の演習用砲撃だ。だが、耳に響いたその音は、実戦のそれと何ら変わりなかった。重く湿った爆音が、腹の底でくぐもった音に変わる。


私はベッドから体を起こし、訓練用の制服に腕を通す。無意識のうちに、指先がシャツのボタンを留めていた。


(今日が、私の命令で誰かが死ぬ日になる)


軍の士官試験──卒業をかけた最終演習。

座学も、模擬戦も、ここまでの評価は全て前座にすぎない。今日、この試験で適性を認められなければ、私は士官ではなく、兵士として戦場に送られる。


つまり、命令する側になるか、命令に従って死ぬ側になるか。


「おい、寝坊するなよ」


声とともにドアが開いた。

魔理沙だった。制服のネクタイを噛みながら、器用に口だけで笑っている。


「試験当日だってのに、緊張感ねえな」


「……寝れなかっただけよ」


「へえ、霊夢でも緊張するのか。珍しい」


彼女は私の幼馴染であり、士官候補生の主席。

常に冷静で、戦術でも、記述試験でも、訓練でも、全てにおいて誰よりも速く、正確だった。


だけど私は知っている。魔理沙は本物の戦争を知らない。

誰も殺したことがない。誰にも殺されそうになったことがない。


この試験で初めて、それを突きつけられる。


演習場に集められた我々に、教官は淡々と告げた。


「今回の試験で不合格となった者は、士官課程を除籍し、次週より前線部隊に配属される。生還の保証はない。以上だ」


誰もが凍りついた。

ただの試験ではない。これは、生死を分ける査問だ。


「目標は防衛任務だ。制限時間は三十分。詳細は配布資料を確認し、各自が指揮官として作戦案を立案すること」


無機質な試験室に通され、各自に配られるのは一枚の作戦図と、数行の設定。


【想定状況】


敵軍兵力:歩兵10,000名、戦車150両、航空支援あり

自軍兵力:歩兵5,000名、戦車50両、砲兵20門

地形:丘陵地帯+森林地帯。背後に補給路。

条件:撤退不可。拠点を死守せよ。死傷率40%以下で合格。


私は鉛筆を握りしめた。

情報は少ない。即興で、確実な打開策を出せと言っている。


(真正面からぶつかれば潰される。数も火力も劣勢……)


私は地形図に目を落とす。丘陵を活かせば砲兵が使える。森林には伏兵……あるいは擬装……。


時間は少ない。だけど、解けない問題ではない。


(……でも、これで本当に人が死ぬかもしれないと思うと……)


鉛筆の先が止まる。その一瞬。


(──違う。私は士官になるんだ。迷ってる暇はない)


一気に手を走らせる。戦車を囮に、森林で敵補給線を断ち、砲兵で高地制圧。敵の司令部が混乱したところで、歩兵を浸透させる。


魔理沙なら、どう書いたか?


ちらりと隣を見ると、魔理沙は既に鉛筆を置いていた。腕を組み、目を閉じている。


(もう書き終わったの?)


試験終了の声が響いた。


教室を出た後、私は思わず声をかけた。


「もしあんたが指揮してたら、どうやって勝ってた?」


魔理沙はニヤリと笑った。


「森林に狙撃班を伏せて、敵の指揮官をまず落とす。砲兵は囮。派手に撃たせて、こっちが隠れてる位置を悟らせない。補給線? 切るんじゃない、乗っ取るのさ。敵の物資を奪えば、こっちは倍の兵力で戦えるようなもんだ」


私は息を呑んだ。

それは、私にはなかった“発想の戦術”だった。


数日後、試験結果が発表された。


魔理沙は主席での卒業。

私は上位合格。士官認定を受け、次週より前線への派遣が決まった。


──だが、これは始まりに過ぎない。


戦場には、答えなどない。


正しさも、勝利も、誰かの死体の上にしか築けない。


そう教えられるのは、これからだ。

※注意 東方プロジェクトの二次創作です

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