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即興短編

横島くんに告られて

作者: 山本天使

山本やまもと天使えんぜさん、大事な話があるんだけど……。昼休み、体育館裏に来てくれないかな」


 横島よこしま沙汰郎さたろうくんに呼び出されてしまった。

 カレはクラスの女子の憧れの的──

 いいの?

 あたしなんかでいいの〜〜〜?



 ではここから実況します。

 やって来ました、体育館。

 ええ、まだ裏ではありません。しっかり表のほう。

 この建物の裏に、カレが来ているのでしょうか?

 とても退廃的なイケメン、枯れ木のような華奢なスタイルのモデル体型、トンネルの中のような響きのイケボをもつカレ──

 帰宅部のエース!

 その名も横島よこしま沙汰郎さたろう

 対するこのあたしは山本やまもと天使えんぜ

 名前だけ聞くとものすごい美少女みたいですよね?

 しっかり地味です。

 見た目はまぁまぁかわいいかなと自分では思ってたりしますが……

 とにかくその正体は地味っ娘です。何も取り柄がありません。

 唯一自慢できるといえば、そろばんさばきがとても速いくらいでしょうか。

 ええ、今のところ何の役にも立ってません! 

強いていえば老化防止に役立つかもしれないですね。って、まだ17歳ですがな!


 さて、ドキドキします。


 あそこの角を曲がれば体育館裏です。


 曲がりました。


「やぁ、来てくれたんだね」


 屋外なのにトンネルの中から響くようなイケボのひとが待ってくれていました!


「あの……」

 白々しく聞いてみちゃったりしますね!

「な、何の用かなっ?」


「じつは……」

 カレの口が動き、あたしは告白されちゃいました。

「俺、キミのことが好きじゃないんだ」


 きゃっ……


 きゃーーー!?


 きゃあ……?


 ──なんて!?


 あたしが言葉を失っていると、横島くんが続けて言います。

「前から全然気になってないんだ、山本さんのこと。不思議だよね、クラスの他のそこそこかわいい女子には全員ムラムラしたことあるのにさ、山本さんにだけはちっともムラムラしないんだ」


 えーと……。


 あたしのことを傷つけて、泣かせようとしているのでしょうか? わかんない!


「でもさ、山本さんって間違いなくそこそこかわいいし、何より名前がキラキラじゃん? だから、きっといつか好きになってくれるヤツが現れると思うよ。自信をもって!」


 あのぅ……。


 あたしは何を励まされているのでしょうか?


 教えてもらえます、読者さん?


 ……いやきっと誰にもわからないよね!?


「ふ……。正直な気持ちを伝えるのって、勇気がいるんだね。初めて知った青春の1ページ」

 なんだかポエムを呟いてます!

「そういうわけだから。間違っても俺に恋心なんか抱かないでね。キミのこと好きじゃないから。付き合いたくないから。話はそれだけ? じゃ、俺、行くね」


 カレは背中を向けて、スタスタと去っていきました。


 あたしの心に風穴を残して消えました。




 カレのこと、あたしが好きだったか? っていうと──まぁ、好きになる以前に諦めてたけどね、好きか嫌いかって聞かれたら大好きだったけど、まぁ、正体はへんなひとだったね。


 ははは!


 たとえ好きじゃないひとからでもね、「好き」って言われたら嬉しいし、力になるもんだけどね、しつこくさえされなければ。


 死のうかなって思っちゃってるね、今。


 ははは!


 みなさんは好きなひと、いますか? いるなら正直に伝えましょう。

 好きと言われて嬉しくないひとはいません、しつこくない限り。

 もしかしたら嫌な反応をされることもあるかもしれませんが、その場合は「あぁ、自分の見る目がなかったんだな」と勉強しましょう。


 ただ、伝える必要のない気持ちは黙っておきましょうね。


 あははは!




 あれ……? 涙がぽろり……






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― 新着の感想 ―
【喪女】や。スバラシイ【喪女】が居ります。 こんな経験を繰り返せばこそ、女としては需要無いけど嫁としては【真の喪女】に育っていくのかどうなのか。朝から笑わせていただきました。
ふっ。 あんたなんて絶対好きになんてならないし! 石投げていいですか?o(`ω´ )o
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