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定子の髪を梳きながら

 関白道隆さまと奥方様は、早朝からいらっしゃった。定子様の朝のお支度をたくさんの女房たちが心を込めてなさっている。髪を、清少納言が()いて差し上げているのを、そばに控えて見入っている。


うん、きれいな方だなあ。髪の長くて、つやつやと美しいこと!!


定子さまが、清少納言と話している。


「あなたは、淑景舎の君を見たことがあって?」


「いいえ、まだですわ。前の年の二月に関白様がなさった積善寺(しゃくぜんじ)の供養の時に、後姿をちらっとだけです。」


「それなら、あの柱と屏風の間から見て御覧。とってもかわいい方よ。」


まあ、公認ののぞき見ね。定子さまは、茶目っ気がある。私も、一緒にのぞき見させてもらおうっと。楽しみだ。


「紅梅は着ないほうがいいけど、わたくしは萌黄が好きではないのよ。」定子さまは、お衣装がお気に召さないようだが、とてもお似合いで、お美しさが際立っている。妹君も、このように美しくていらっしゃるのかしら。


ご準備も整って、定子さまは関白様方が待っていらっしゃる方に出ていかれた。お言いつけ通り、柱と屏風の間から、清少納言と並んでのぞき見をする。


他の女房たちが、

「まあ、お行儀の悪い。とんでもないことだわ。」

と言っているが、無視!


ずいぶんよく見える。関白様の奥方は、母とはいえ臣下の身分だから、女房姿で、裳をつけていらっしゃる。淑景舎の方は、紅梅の衣をグラデーションのように何枚も重ね、濃い綾の単衣をはおり、赤いうちぎに萌黄の表着(うわぎ)を着ていらっしゃる。扇でお顔を隠していらっしゃる姿がたいそうおかわいらしい。


関白様は、

「ここには天女がお二人もいらっしゃる。この父を置いて、天に帰って行ってはなりませんよ。このさまを見れば、不老不死の薬などなくても、寿命が延びて、千歳までも生きていられるこころもちがします。」

など、いつものように冗談を言われて、和やかな雰囲気を醸し出していらっしゃる。


中の関白家の栄華は、それこそ永遠に続くかのように見えた。

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