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一切経供養 その2


 いよいよ定子様が二条の宮から、一切経供養の行われる積善寺に行啓なさるとき、私たち女房も車に乗って移動したのですが、これがまた、大変な騒ぎでしたのよ。夜明け時である寅の刻に定子様が出発なさると聞いて、そのつもりで用意して待っていたのに、夜が明けて日が昇ってしまっても、出発されなかったの。やっと出発するとき、女房たちを車に乗せる様子をご覧になるということで、御簾(みす)のうちに定子様、東宮妃になられた原子様、三の君、四の君、母君の貴子様、高子様の妹君お三方が立ち並んでいらっしゃったの。


 そして、車の両脇には大納言伊周様、三位の中将隆家様がいらっしゃってね。書付にあるとおり、女房の名を呼んでいかれるの。そんな中、太陽の光で顔や髪を人目にさらしながら歩く気持ちのやりきれないこと。このご兄弟は、それはもう見目麗しくご立派でいらっしゃるから、倒れもしないで、車まで歩くことができたのは、えらいのか厚かましいのか。定子様は、見苦しいと思っていらっしゃるだろうなど思うと、全く生きた心地もしませんでした。まあ、乗ってしまえば、中から外は見えても、外から中は見えませんから、車が立ち並ぶ様子や、四位、五位、六位などの身分の高くない男の人たちがたくさん歩き回っている様子を、面白いと見ていましたよ。中には、車に近づいて話しかけてくるものもおりました。


(ほんのちょっと歩くだけで、この大騒ぎ。お買い物を楽しむとか、学校まで歩くなんてしたら、清少納言は、本当に卒倒するんだろうな。。。)


 日がすっかり昇ってから、主上(一条天皇)の母君、東三条院詮子様がお見えになったの。関白様を筆頭に、そこにいた殿上人が皆、集まってきて、お迎えするなさってね。お車が十五台連なって、それぞれに美しい尼車や詮子様の唐風の車、車からのぞく薄墨の衣、女房たちの桜色や紅色の衣、などなど優雅で素晴らしいこと限りないの。


 関白様や、関白様の弟君方が、詮子様を大切にし、ご奉仕される様の、素晴らしいこと。


 積善寺に着くと、唐の音楽が奏でられ、獅子や狛犬(こまいぬ)が舞い踊り、筝の調べ鼓の響き、まるで仏の国に来たようで何もわからなくなってしまうような心持でした。


(うん。その気持ちは、分かるような気がする。)

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