表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

会いたい息子

  悲嘆に明け暮れる夫婦が下した結論は?

   机に手を着いて、手で顔を覆っている女性が居る。男はその妻の痛々しげな様子を見守っている。

  男はフゥッと溜め息を吐き、覚悟を決めた。それから妻の肩に手を置いたが、妻は泣きじゃくっている。

「愛しい我が息子」

   妻は数日はその言葉を何度も呟いている。

   夫はたまに優しく語りかける。

「息子に会いに行くか」

   妻は夫の顔を見つめ、何回もうなづいた。

   その周辺に伝わる噂、それはある場所に行くと死者に会える、その為にそこに行く人は多かった。

   夫と妻は部屋を綺麗にしてから、家を出ると真っ直ぐに歩きはじめる。

   近くの人が二人に気付く。

「もう、大丈夫なのか?」

   住人が声を掛けると、夫は振り向いて、悲しく頷く。

   事情を察した住人は血相を変える。

「止めろ❗️」

   夫の肩を掴んで、引き留める。

「ありがとう、でも、もう、決めた事なんだ。」

   夫は住人の肩を優しく振り解くと、先に進んだ妻に追いついた。住人はがっかり肩を落とした。

「行くなよ」

   住人は弱々しく、そう呟いた。

   妻は何かに取り憑かれたように走り出す。

 「嗚呼、可愛い我が息子。

   妻に着いていくだけだった旦那がそれを認めると妻を追い越す勢いで走り出した。

   その目に映ったのは手を伸ばし、両親の顔を見つめる可愛い我が息子。

   パーン、パーン 

   乾いた銃声が轟き、二人はその場に倒れた。

   辺りには多くの亡骸が転がっていた。


   時は第二次世界大戦中、スナイパーストリートでの出来事。

   夫婦は満面の笑みを浮かべていた。


息子に会えたのかは誰も知らない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ