表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HOLY QNIGHT  作者: AKIRA
5/73

序曲『理由』‐4‐

 私と成瀬は降り注ぐ攻撃をよける。成瀬は一歩早くだが。


「やっぱり成瀬君は早いわね」


「夏美さんだって十分よけきれてるじゃないっすか」


 私自身もしっかり攻撃をよけはしたが、成瀬のように戦いにおいて相手の攻撃をいち早くよけ、すぐに戦闘態勢に入れる者は、いつでも戦いにおいて有利な状況に回れる利点がありいいと思う。

 攻撃が止み、二人並んだ私たちは自分たちの武器を握りなおし少女を見つめた。


「じゃあコッチの番ね?」


 成瀬に言うと、彼は頷く。

 私と成瀬は少女に向かい駆けていく。



 ◆  ◆  ◆



 俺の攻撃を回避した彼女は反撃をしてきた。


「それ!」


 迫ってくる彼女は手に持ったアタッシュケースを地にこすり付ける。

 火花が上がり、直後アタッシュケースが炎を纏い、下から俺に襲い掛かってくる。


「んな、無茶苦茶な」


 後ろに飛びのき回避する。だが彼女はもう一歩踏み込み、もう一つのアタッシュケースを上から振り下ろしてくる。

 俺は鞭の持ち手の両端を両手で持ち受け止める。ガン、と言う音と共に受け止めたそれは、女性とは思えないような重い一撃。手が痺れる。


「意外に丈夫ね。今の受け止められるなんて」


「様子見の攻撃なんて朝飯前っすよ」


 頼もしいわね、なんて言う彼女。俺も強がって言ってみせたが、結構いっぱいいっぱいだ。このままこの先何度も攻撃を回避するのは不可能だ。

 そう、このままじゃ---


「じゃあ…」


 一気に彼女との間合いを取り、集中する。


先読さきよみ


 そう言って俺は彼女を見据える。

 彼女は俺に向かい攻撃を仕掛けてくる。横薙ぎに襲い掛かってきた攻撃を紙一重でかわす。

 もう一撃来たが、それもギリギリでかわし、がら空きになった体へ回し蹴りを繰り出す。だがそれは彼女にしゃがんでかわされた。

 彼女はアタッシュケースを置き、俺に殴りかかる。だが---


「わかってますよ。それも」


 そんな事を言いながら、それも難なくかわし、素早く後ろに間合いをとった。

 それを見て彼女は置いたアタッシュケースを持ち、俺を見つめる。


「中々厄介な能力を持っているのね。相手の攻撃の手が見えるなんて」


「ありがとうございます」


「でもあんなに無駄なくよけられるなんて。成瀬君の戦法はギリギリでよけて反撃の機会をうかがう、みたいな所かしら」


 ドンピシャで戦闘スタイルを読む彼女。そしてアタッシュケースを握りなおし構えた。


「でもそれなのに一旦距離を取ったって事は…」


 そこまで言うと彼女は俺に向かってきた。俺もすぐに構えなおし向かってくる彼女を見据える。

 アタッシュケースで殴りかかって来たが、それをスウェーでよけ、次のバックブロー気味に来た攻撃をしゃがんでよける。そしてその回転のままアタッシュケースで足払いを狙ってきたので、ジャンプして避ける。

 だが、そこまで来てやっと彼女の狙いがわかった。初めに俺が仕掛けた攻撃と同じ、相手を死に体にする事が目的だったのだ。


「やっぱり。その能力には制限があるのね」


 彼女の声で我に返り、前を見ると目の前いっぱいの銀の壁。

 アタッシュケースが俺の顔面に打ち込まれたのだ。さすがに彼女のようなよけ方は俺には出来ない。殴られた俺は勢いのまま床を転がる。

 加減してくれたのだろう。痛かったが、気を失うまでは行かなかった。


「やられたらやり返さなくちゃ気が済まない性質たちなの。ごめんなさい。痛かった?」


 俺は、大丈夫です、と言うと、治癒を開始し、顔の腫れがひいていく。

 水行が長けていて、男のイメージとしては合わないが治癒は得意だ。自分では気に入ってるが…。


「攻撃の手が見えるのは良い事だわ。でも見える事で何も考えないのはいけない事。

 攻撃一手一手に意図があるんだから。理由無く手なんか出さないでしょ?

 ましてすべての手が見えるならいいけど、あなたは3手ぐらいしか見えない。尚更そこは気を付けないと。あと---」


 手合わせが終わり、彼女は早速俺の戦い方の注意をし始めた。俺は自然と正座になり俯いていた。

 しばらく話し続けると、ふと気付いたのか、一つ咳をし苦笑いを浮かべた。


「あ、ごめんなさい。つい話し込んじゃって」


「いえ。上のランクの方直々に教えていただけて嬉しいです。はい」


 それなりに自信はあっただけに少し悔しい。

 俺が落ち込んでると、彼女は微笑みながら近づいてきて、頭を撫でてきた。

 その撫でる手は暖かく、励ましてくれているようだった。


「落ち込めるって事は良い事だわ。また上を目指せるんだから。何も無いまま上にいったって何も得られない、私はそう思うの。

 それにあなたはきっともっと強くなる。保証するわ」


「…ありがとう、ございます」


 撫でられたのが恥ずかしいのか、強くなるなんて言われたのが嬉しいのか、やけに顔が熱くなる。

 そして彼女は手を引きしゃがみ、手を差し出す。


「腕も気構えも申し分無し。これからよろしくね? 成瀬君」


「はい。よろしくお願いします。えっと…」


 差し出された手を握ろうと思ったが、彼女をどう呼べばいいか判らず手を止める。

 思案していた俺を見て、彼女が俺の手を取る。


「夏美でいいわ。苗字は慣れないし、言いづらいと思うから」


「あ、はい。えっと、夏美さん。よろしくお願いします」


 握手をする俺と夏美さん。

 冬の寒空の下、俺のこの事務所での仕事が始まった。


「じゃ、中でコーヒー飲もうか?」


「そうですね。俺が入れますよ」


 お願いね、と言って中に入っていく夏美さん。後に続き俺も入っていく。

 まずはコーヒーを入れることからか。



 ◆  ◆  ◆



 少女に向かっていくと、成瀬は鞭を繰り出す。


「先手必勝!」


「え、きゃ!」


 その攻撃は彼女に一直線に向かっていくが、避けられてしまう。

 いや、避けられたのではなく、反射的にしゃがんで難を逃れられただけだった。

 うずくまる少女は手で顔を覆い、指の間からこちらを見た。その眼は狂気に染まり、私たちを殺したいと言っているようだ。


「ナンデ?私はナニもマチガッタ事なんてシテナイ」


「…そうね。あなたはただ仕返ししただけですものね」


 少女は私の返事に反応する。成瀬もその言葉に驚きを隠せない。

 私は少女に歩み寄っていく。少女は身構えているが様子を見ている。成瀬もその様子を鞭を構えながら見守っていた。


椎名しいな さや、ちゃんでしょ? あなた」


 名前を呼ばれ、少女はピクリと体を硬直させていた。

 私は近づきながら続ける。


「あなたは事件の被害者の中の一人、琴浦ことうら 霧緒きりおの彼女だった」


「……て…」


 私の言葉を聞いて下を向きつぶやく少女。

 私はまた近づいていく。


「事件のあった前の日、あなたは自殺した」


「…めて…」


 私の言葉に肩を震わせ、言葉を切ろうとする少女。表情は下を向いていて読み取れない

 私は尚も続け、近づいていく。


「その前の日あなたは彼に呼び出される。そして…」


「やめて…」


 怒気を含むつぶやき。近づいていた私は足を止めた。

 少女との距離は2m弱。

 私はメガネを直しながら最後の言葉を言う。


「彼を含む3人に---」


「やめてって言ってるでしょ!」


 その怒声と共に、少女の近くにあった多数の石が、銃弾のように私に襲い掛かってきた。



時間軸が行ったり来たりすいません。


次あたり序曲終了です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ