そして始まる非日常
目の前に立っている男は髪形はオールバックで黒のシャツに黒のジーンズ。
少し場違いなサングラスかけてる。
その姿は一見すると上田君には見えない。
だが私の眼はごまかせない。
いつもの平凡な上田君じゃないけど上田君だ。
でもどっちかというとこっちのダンディな上田君の方が好きかも♪
そんな事を考えながらブランコが止まるまで上田君を見てると
上田君は無機質で無表情なままで一言だけ呟いた。
「杉原香奈子、君を消去する。」
・・・
暫くの間沈黙が場を支配していた・・・ように思えた。
「ほへっ??」
聞き間違いだろうか?私を消去すると聞こえたような・・・。
余りにも想定外の言葉に私の脳は確かにショートしていた。
私は念のため今一度上田君に確認をすることにした。
「あのぉ聞き取りずらかったのでもう一度お願いします。」
上田君は黙ったまま答えることはなかった。
そっと視線を落とすと彼の右手にはある物が握られていた。
プラスチックでは表現しようのない重さの重厚感。
夕日に反射しながらも鈍色に光る銃身。
銃身???まさかそれは…銃とゆー奴では?
あれは本物だ。
私の心の中の何かがそう感じている。
私は一気に背筋が凍り付いた感じがした。
私は今一度目線を持ち上げ上田君と視線を合わせた。
任務を遂行するだけの無機質な瞳。
冷たく残酷な視線が私の心をも突き刺してくる。
私は全身の筋肉が硬直するのを感じた。
まるで獲物を狙う獣のように私から視線を外さない。
視線を逸らしたらその瞬間に撃たれる予感がする。
ここに居たら危険だ。
私の細胞全てがそう叫んでる。
でも身体が蛇に睨まれたカエルのように動かない。
ゆっくりと大樹は香奈子に近づいてくる。
あの距離だとまだ撃ち抜ける自信がないのか・・・。
怖い・・・怖い・・・
動け・・・
動け
動けーっ!!
刹那、私はふとももを叩き、
強制的に震えを止め、大樹が腕を持ち上げ銃を構える瞬間、
横に転がりその勢いで公園を飛び出していた。