イマジナリー上田君
私は半信半疑のまま、お昼休みに情報を収拾したけど、
どうやら上田君を覚えてるのは私だけらしい。
皆、口を揃えて言う。
私の隣は始業式から誰も居ないと…。
由香に至っては昨日の憂さ晴らしのカラオケ、ボーリング、ケーキバイキングも覚えていないらしい。
いや、そのようなことはしていないというのだ。
なんてこった。
ミルクレープにモンブラン、レアチーズにザッハトルテ、洋梨のタルトの味まで忘れてるとは…
・・・
勿体ない。
非常に勿体ない。
私ならその記憶にある味だけで3日は楽しめるというのに。。。
もしや私の記憶がそもそも間違えているのだろうか?
だが私が覚えている記憶が嘘だとは到底思えず、
限りある頭を悩ますのだった。
しかしこの答えは案外早く向こうからやってくるのだった。
・・・
放課後、部活が終わり、
今日こそは寄り道しないで帰ると由香と別れて私は一人で歩いてた。
住宅街を自宅に向かい歩いてると夕暮れの公園があったのを見つけてしまい、
結局寄り道しないという誓いは早くも破られてしまう。
公園全体が茜色に包まれ、涼しい風が私の頬をすり抜ける。
誰もいない公園で私はブランコに座り、ゆっくりと漕ぎ出す。
あぁ、力いっぱい漕ぐと、彼の事なんてどうでもよくなっちゃう。
きっと私の中で作られたイマジナリー上田なのだ。
きっとそうだ!
そうに違いない。
彼のことなんて・・・こと・・・なんて?
な・・な・・な・・なんで???
漕いでたブランコの上で私の身体は正面を向いたまま
ブランコは惰性でゆっくりと前後する。
目の前には一人の男が立っていた。
そしてその男に私は確かに見覚えがあったのだ。
「う・・・う・・・うえ・だ・・・くん?」