上田大樹という人
話は半年前に遡る。
高校三年の始業式。
毎年クラスが発表される掲示板にクラスを見に行く。
自分の名前を探し、同じクラスの名前を確認する。
よかった、由香とまた同じクラスだ。
教室に向かい、私が扉を開けて中に入ると私に気付いた由香が手を振る。
既に何人か友達を作って話していた。
三年にもなると皆知っている仲なので友達も出来やすい。
私は話してる由香を尻目に指定された席に着く。
右隣りは………げっ……
井上かよっ。
別に嫌じゃないがこいつは以上にうるさい。
まぁ最初の席替えまで我慢だな。
左は………おや?まだ来てないのか?
そんな時、扉が開いて先生が入って来た。
「おーい。皆揃ってるかー?」
先生が声を出すと皆が自分の席に急いで戻っていく。
「これから始業式だけど、その前に転校生紹介しとくぞー。おーい入って来い。」
先生の声に呼応するようにガラリと前の扉を開けて入って来たのは
皆のザワザワとした期待を見事に裏切るような
あまりにも平凡な男だった。
しかしそれでもこの時期の転校生は珍しい為、皆興味津々だ。
私も釣られるようにゆっくり彼を見てみた。
身長は170センチくらいか?体型は普通。
眼鏡と前髪で顔を隠してるけど
顔も平凡……かな?
彼はゆっくりと教壇に立ちこちらを向いて挨拶を始めた。
「上田大樹です。よろしく。」
なんですか?声まで顔から想像できる位、平凡ですが。
びっくりするくらいの平凡さに逆に驚くよ。
「席はそうだなぁ、杉原の隣に座りなさい。」
先生は教室をぐるりと見回し、私の隣が開いていることに気付いた。
えぇっ私の隣かよ。
彼はゆっくりと空いてる私の隣に歩いてきた。
「よろしく。」
小さな声で呟くと席に着いた。
とりあえず悪い奴では無さそうだ。
「うん、よろしくね」
会釈しながら彼を見た。
少しだけ彼が笑ったような気がした。