翌日の異常
8時20分。
教室の後ろのドアから覗いてみる。
私の席は窓側2列目前から4つ目の机だ。
もちろん窓側の隣には彼の席があるのだが……
とりあえずは居ないようだ。
ほっと胸を撫で下ろす。
思ったよりウジウジしてる自分に少しびっくりする。
まぁ逆にフラれた翌日平気な顔をしててもおかしいのだが。
そろそろ授業が始まるし…入らなければと足を踏み出した瞬間、後ろから誰かに抱き着かれた。
「かーなーこっ。おっはよーっ。」
「ひゃっ…にゃ?…由香ぁ?」
すっとんきょうな声を上げてしまった私を由香は笑って抱き着いていた。
「どしたの?入らないの?」
由香が後ろから抱き着いたまま尋ねてくる。
「うん。今入るとこだよ。上田君も居ないみたいだし、あードキドキしたぁ。今日は休みかぁ。」
ほっと胸をなでおろすように由香に同意を求めると、
由香が首をかしげながら、
とんでもない一言を繰り出して来た。
「上田君って……誰?」
一瞬時が止まったような静寂が辺りを包んだ。
「えっ?だからぁ上田君だって……私が昨日告った……」
由香は驚いた表情で私の顔を覗き込んできた。
「えーっ。香奈子告ったのーっ?
で、上田君て何組の??」
さっきから話が食い違う。
まるで同じクラスの上田君が居ないかのような………
「何組ってうちのクラスの。
ほらぁ私の隣の席の。ねっ?」
「香奈子の隣って井上でしょ?」
「だからぁ、ちがくて…反対の。」
噛み合わない会話の末にキョトンとした目で由香は私の顔を見た。
「何馬鹿なこと言ってるのよ。
香奈子の隣は半年前から居ないじゃない。」
「え゛っ?」