世界で一番短い挫折
「あの・・・上田君・・・私・・・あなたのことが好きになっちゃいました。
よかったらアタシと・・・つきあっ」
「ゴメン・・・無理」
その言葉は確かに私が言い終わる前に放たれた。
えっ?
あれ?ゆ、勇気を出して、せっかく呼び出したのに
告ってる途中でフラ・・・れ・・・た?
状況が整理できないまま、それでも何かを話さないとと我に返り
「あ・・・あの・・・」
ってもう居ないんかーいっ。
既に彼、上田大樹はその場所には居なかった。
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「えっ?香奈子フラれたの?」
アップをしながら由香は私から報告を聞いていた。
「アハハハ、見事にフラれましたさ。告白すら最後まで出来なかったしねー、アハハハ」
乾いた笑いで取り繕っていたが、明らかにショックなのが由香にはバレている。
「っていうかなんで上田なのよ?
顔に特長無いし、存在感もないし、勉強も運動も平凡だし、
あんなのそこらじゅうにウジャウジャ居るじゃん。」
由香は私を必死に励まそうとしてフォローしたつもりの様だが
その言葉が私をさらにへこませた。
「そんなウジャウジャ居る奴にフラれる私って一体・・・。」
へこんだ私は大好きな部活に集中できずにもやもやとした時間を過ごすのだった。
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由香は良い奴だ。
部活が終わった後カラオケ、ボーリング、ケーキバイキングまで付き合ってくれた。
由香が居なければきっと私はもっとへこんでいただろう。
流石は私の親友だ。
お風呂に浸かり、一日の疲れを癒しながらボーッと天井を見上げる。
明日どんな顔をして上田君に会えば良いのだろう?
残念な事に私と上田君は同じクラスだ。
更に残念な事に席は隣同士。
「あーぁ、なんで告っちゃったんだろ?」
答えはわかりきっている。
考えるより体が動いちゃうからだ。
っていうか考えるのが苦手なんだ。
いや、嫌いなんだ。
この性格のお陰で生まれてこの方17年悩まなくて済んでいた。
だがしかしこの性格のお陰で今回初めて悩みが出来てしまった。
人生初の挫折だ。
しかしまぁ悩んでも告った事実が消える訳じゃ無い。
ウジウジするのもらしくないし、まぁなるようになるかぁ。
私は見上げた天井に伝う水滴を眺めながら心が落ち着いていくのを感じた。
こうして私、杉原香奈子の人生初の挫折は3分24秒で幕を閉じたのであった。