表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/36

9. キャンプ運用 <8> 怪しい監視人

 そいつは、教室を離れ、中庭のイチョウの木の陰で、上司にスマホで連絡した。みたことを、ありのまま伝える。

 ――なに馬鹿なことをいってる! ひとが消えるわけないだろ。真面目に報告しろ!

 ――いや、ほんとなんです! ほんとに小僧が二人いて、一人が消えたんです。

 少し、間が合いた。

 上司も冗談ではないことを悟ったらしい。

 ――疲れているな。すこし休め。待機して、しばらく盗聴器に耳をすませろ。わかったな!


 そいつは、ため息をつくと、スマホをしまい、待機場所のクルマに戻った。

 学校は、国道から少し坂を下ったところに正門があり、もう少し行くと、国道と県道をつなぐバイパスに出る。

 そいつは、そこのバス停に止めた軽四に乗り込み、盗聴器のイヤホンを耳につけた。平日の午後は、一時間に一本しか、バスは来ない。通勤の時間帯だけの運行にしようかという話も出始めている。パトカーも、まず通ることがなく、待機場所としては、都合がよかった。


 別の場所で、スマホの盗聴を行っていたグループの一人が、眉をしかめた。

 犯罪の匂いがした。姿が消えるのをみた、というのは、クスリをやっているのかもしれない。

 彼は、報告書を作成しメールを送った。

 こどもが関わっている可能性があるので、優先度を上位のAとした。

 すぐに、誰かが派遣されるはずだった。


 受信ゲートから出てきた旅行者をみて、地球キャンプのスタッフは、緊張した。

 初めての植物系異星人だった。

 頭にアスパラガスのような葉を茂らせ、皮膚に樹皮状の粗い筋をきざんだ丸太が、ゆらゆらと前後左右にゆれながら、こちらへ歩いてきた。根のようにみえるのが、動物での足にあたるようで、根の先がとても細かく分かれており、歩くたびに、ほうきで道路掃除をするときのような、サッサッという床をこする音がした。

 スタッフは、あわてて床の摩擦度を調整した。摩擦度が低すぎると、このタイプの異星人は、進めなくなってしまう。


 植物人は、身体から生えた枝にひっかけたひもを引っ張った。キャリーケースが植物人のもとまで走ってきて、植物人にぶつかって止まった。

 植物人は、ケースを開けると、出身惑星の身分証明書を取り出して、スタッフにみせた。出身は、ヒューロー星――非常に繊細な植物文明が発達していることで有名な星だった。


 植物系異星人のための、温室のようなキャンプ内の宿泊施設に案内すると、次のジャンプまで、一週間程度あるので、ここ地球の、植物の集まっているところをみたいという。

 スタッフは、当然のごとく、洋に連絡をとった。

 面倒な異星人は、洋にまかせればよいという、暗黙の了解ができつつあるようだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ