8. キャンプ運用 <7> 怪しい監視人
マルクのあとにも、数人の異星人がジャンプしてきた。最初は、右往左往していた洋たち地球キャンプのスタッフたちも、だんだんと慣れてきた。
幸いにも、というか、運が良いことに、マルク以降のジャンプ客で、地球を見物したいという者はいても、詳しく文明状況まで観たいという者はいなかった。市街地、繁華街を案内すれば、それでよかった。
洋が体育の授業を受けていると、またジャンプの連絡が入った。
校庭に出て、サッカーのルールを学んでいたところで、ちょうど、試合形式の授業に入ったところだった。
試合に入らない者は、グラウンドの端で、試合を眺めているだけで、退屈していた。
洋は、気分が悪くなったからといって教室で休む許可をもらい、授業を抜け、いったん教室に戻った。
教室の洋の席に、洋自身の立体幻像を置くと、体育館の裏側に行き、ジャンプを待った。
予告のない、直前の連絡のみの急なジャンプは、久しぶりだった。
洋の上の空間がゆがみ、波うった。黒い震える影が洋の真上に出現し、洋のほうに降りてきた。黒い影は大きく波うち、ゆらぎながら、洋に重なっていった。
洋は、客が無事に着いたことを、スタッフに確認すると、教室に戻った。
ぼうっと前方を見ている立体幻像を消し、席に座った。幻像の映像を、もう少し生気のあるものにしないと、そのうちバレてしまう。洋は立体幻像についての注意事項を、思念メールでスタッフに伝えた。
ドッと、体育の終わった生徒が戻ってきた。着替えるときの体操服と肌着のこすれる音、声変わり前の生徒の甲高い話し声が、教室いっぱいに広がった。
洋は気づいていなかったが、洋が立体幻像を消したとき、一階にある教室の窓から、なかを覗いていた者がいた。
そいつは、生徒のふりをして、校内に潜りこみ、洋を探していたのだった。一見、十二、三歳の中学生に見えたが、童顔を利用して潜入しただけで、二十歳は越えていた。
そいつは、驚愕した。洋が二人いて、一人が一瞬で消えたようにみえたのだ。