7. キャンプ運用 <6> 初めての客人
ホテルの部屋にあるベッドやトイレ、洗面所の使い方をくわしく教えた。マルクたちの種族は、風呂には入らないそうなので、風呂の説明ははぶいた。
説明したときの質問の様子から、かなり地球のことは調べてきたらしいとわかった。
星間交流連盟に入っていないけれども、高速移動体を発明・運用している文明度レベル3~4の星には、そうそう行く機会がない。マルクのような異生物学者で文明接触・文化変容をテーマにしている学者にとっては、千載一遇の機会なのだそうだ。だから、異生物文明学会が、銀河216宙域で開催されることになったとき、わざわざ遠回りの経路を選んで、こちらを通るようにした。
学会前に地球キャンプが設営されて、とても運がよかったという。
部屋の探索が終わると、洋はマルクを連れて、ホテルを出た。日本の交通機関の使い方を教えておこうと思ったのだ。地球上を移動するたびに呼び出されたりしたのでは、かなわない。
洋の住む市の中心街への交通機関(バス、電車)の切符の買い方、乗り方を一緒に乗りながら説明した。中心街へ電車を利用して行くと、繁華街から官庁街、金融街をまわって案内した。
一般市民の生活が見たいというので、しかたなく、洋の家まで連れて行き、室内を見せていると、出かけていた母と父が帰ってきた。マルクのことを、学校の校外学習でお世話になった大学の先生だと紹介する。
結局、夕食まで洋の家で食べ(マルクたちは、雑食性で地球上の食べ物は、ほぼ問題なく食べることができた)、ちょうど尋ねてきた隣の圭とまで、談笑して帰っていった。
別れ際、次はマルクの家族も連れてくると、洋の両親と約束し、手を大きく振って帰っていった。マルクの母星では、別れのあいさつで万歳のように両手をあげて、左右に振るという動作があって、力いっぱい、それをやったので、洋の両親と圭は眼をまるくしていたけれど、おもしろいオジサンということで、何とかおさまった。
洋は冷や汗をかいた。圭だけは、まだ不思議がっていたので、関西人だからと説明しておいた。