表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/36

5. キャンプ運用 <4> 初めての客人

 面倒なことになったのは、この時だった。ウルスス人が、地球のホテルに泊まってみたいといい出したのだ。

 次のジャンプまで、数日ある、せっかく辺境のめずらしい場所に来たのだから、原住民の宿泊施設に泊まってみたいという。追加の費用を払ってもよいという。


 キャンプのスタッフは、あわてて洋に相談してきた。洋の記憶ファイルには、地球のホテルの知識が、わずかしかなかった。まだ、中学生で、旅行も家族旅行しかしたことがなく、宿泊、移動の予約/支払などは、全部親がやってくれていたのだ。

 洋は、父親に旅行のときのホテル予約ついて尋ねた。インターネットで予約ができると聞き、予約サイトを開き、確認した。

 予約はできるし、費用はウルスス人が負担するとして、あの容姿では、異星人であることがすぐにバレてしまう。


 キャンプ地の周囲を観光したいというのは、転送されてきた旅客の、よくある要望で、異星人であることを隠す光学迷彩スーツが用意されていた。が、用意されていたスーツが、このウルスス人のサイズに合わない。

 スタッフたちは、あわてて、スーツを仕立て直した。直しの費用は、もちろん、ウルスス人持ちである。ウルスス人は、服のサイズが合わないことには、慣れているらしく、特に文句をいうこともなかった。用意のできたスーツを着て、興奮した様子で、出発しようとする。


 スタッフは、今にもキャンプの空間領域から抜けて外に出ようと、ゲートに入ろうとするウルスス人を止めた。いくら光学迷彩スーツを来ているとはいえ、なるだけ、姿を地球人にさらしてしまう時間は少ない方がよい。洋に地球(日本)のホテルの予約ができたことを確認すると、洋自身の身体を、そのホテル近くまで移動するように頼んだ。


 洋は授業中だった。担任教師に、気分が悪くなったといって早退し、ウルスス人――マルクという名前だった――の宿泊するホテルの前まで電車とバスを乗り継いでたどり着いた。 

ホテル到着の知らせを聞いて、マルクは、スタッフには理解できない、唸り声のような奇声をあげた。駆けるようにしてゲートに飛び込んだ。


 洋は、頭痛を感じると、あわてて街路樹の陰に隠れた。洋の姿が一瞬ゆがみ、波打ったかと思うと、その波からひとつの塊が離れ、そこにマルクがスーツをまとった姿――太った中年の、背広を来た学者風の老人――があらわれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ