4. キャンプ運用 <3> 初めての客人
基地の送迎スタッフは、銀河中心部からの客の到着を、受信ゲートの前で待っていた。ゲート上の表示は、到着済みとなっており、到着時刻も五分ほど前を指している。ゲートの奥にある受信室に客が到着し、身なりを整えてから、出てくるようになっている。
到着してすぐに受信室に入っていくことは、礼儀にもとることとされていた。
ゲートの奥に異星人の影がみえた。スタッフのあいだに、ホッとした空気がながれる。ヒューマノイド型の異星人であることがわかったからだ。
基地のスタッフは、星間キャンプ・地球基地の次元設営母体となっている灰島洋に合わせて、ヒューマノイド型が多く配属されている。やはり、自分たちに近い種族の方が、何かと理解しやすいのだった。
送迎スタッフは、ゲートの出口に小走りに駆けよった。
ゲートから、のっそりと大きなクマのような生物が出てきた。全身が真っ白で、ふさふさとした体毛が手先や足先を隠している。背中に大きなアタッシュケースを背負っている。
スタッフは、手に持っていた生体チェックボードを、クマ人の手のひらにあてた。一瞬で生体情報がチェックされる。ジャンプ前と後の本人確認は生体受信時に終わっているので、主にジャンプ時の肉体損傷を調べるためのものだ。分子レベルでのチェックを行っている。
クマ人は立ち止まって、背負っていたケースを開き、植物繊維製の身分証明書を取り出した。ふさふさした体毛に覆われたごつい手に隠れて、証明書の先しか見えていない。
各惑星上の天然の植物繊維で創られた証明書は、他の惑星では、ほぼ偽造不可能のため、星間交流時の出身惑星の証明書として採用する惑星が増えていた。
クマ人の身分証明書を出身惑星の生体サンプルと照らし合わせ、合っていることを確認すると、スタッフは、クマ人――身分証明書によれば、ウルスス出身者――を、次のジャンプまで滞在するホテルに案内した。