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20.  キャンプ運用 <19> 怪しい監視人

「わかった! 会わせます。どこに連れていけばいいのですか?」

「この公園でいい。あそこのベンチだ」


「あなたへの連絡は、どうしたらよいのですか?」

 男の口調は、恐怖で、すっかり丁寧な物言いに変わっている。


「首の呪い……何月何日何時……とつぶやけ。それだけで伝わる。早くやらないと、呪いの進行は早いぞ! 一ヶ月もしたら、死の恐怖が、おまえを襲うだろう」

「ひいいっ。お許しを。――必ずやります!」

 男は頭を何度も下げ、洋にタムラを会わせることを約束した。


 洋は、ひゅん、と空高く飛び上がり、身体のある方角を向いて、空中を駆けた。幸い、首のない身体は、もとのところに壁にもたれかけたままだった。誰にも、見つかっていないようだ。

 反重力・無慣性機構をフル稼働させて、一瞬で胴体の上に降下すると、皮膚が円環状に盛りあがり、首とのドッキング体勢を整えた胴体の中央部にゆっくりと接触、カチッと音がして首と胴体が連結された。盛りあがっていた皮膚が引っこみ、自然な首の状態に戻った。


 そのまま、洋は、何食わぬ顔で、家に戻った。しばらくして、家の周辺に首無し男の噂が流れた。どうも、近くの小学生が、道をのぞきこんで、胴体だけで壁によりかかっている姿をみたらしい。その子供は、変なことを言いふらすなと、親に叱られたらしい。町の自治会の集まりで、母親が聞いてかえってきた。

 その子供には、悪いことをした。

 洋は密かに反省した。キャンプのスタッフにも伝え、首が離れたとき、首の立体幻像が胴体上に現れるよう、首まわりのシステムを改造した。



駅前の百貨店の横の路地に入っていくと、4階建ての雑居ビルが数件並んでおり、その真ん中のビルの2階の窓に、その黄色の文字が貼りつけられていた。


 ――国際調査事務所――。


 調査員は、ビルをみあげた。

 クスリを使っているかもしれない人間、何らかの理由で子供を長時間見張っている人間が、ここに務めているはずだった。スマホの通話記録から場所をつきとめるのに、時間がかかってしまった。

 調査依頼者のフリをするために抱えた黒いカバンを、胸の前で持ちなおした。

 掃除したばかりなのか、洗剤のにおいがする薄暗い階段を登り、国際調査事務所という、横に細長い札のかかったドアの前まで来た。


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