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567話:ヘルプを要請される2

 やりたいことあるけど、なかなか思うとおりに時間が取れない。

 さらに皇子としてやらないきゃいけないことはなくならない。


 まぁ、時間作って対処しなきゃいけない相手はソティリオスなんだけどね。


「はい、この二人が錬金術科卒業生で、たぶん青いアイアンゴーレムの解析については主導になると思う。マーケットとかでも来てたし、顔は知ってるよね?」

「…………もっとやる気を出せ」


 さっさと済ませようとしたら、紹介の雑さに怒られた。

 場所はルキウサリアの王城の一室を借りて、青いアイアンゴーレムに関係する人員の顔合わせ。

 ゴーレム系はユーラシオン公爵とも連携する予定だから、その辺りを理由に、ソティリオスがルキウサリア側で動く錬金術師と面通しさせろと言ってきたんだ。

 結果、ルキウサリア国王からそっちでやってくれって僕に回してきた。


 自己紹介させたら、ステファノ先輩は表面だけの笑顔。

 ジョーはあからさまに挙動不審。


「おい、まさか今ここでお前の正体知ったなんてことは?」

「いや、この二人なら知ってるよ。テリーの時にもこんなだったから気にしないで」


 ステファノ先輩はいなかったけど、たぶんテリーに会っても対応は変わらない。

 価値基準しっかりしてるせいで、ステファノ先輩はとことん権力に興味ないんだ。

 これが美術系で名がある家の子息だったら違ったんだろうけどね。


「いちおう、王城に作った工房にはあと二人先輩が出入りする。けどそっちは僕のことは知らないし、補助的な役割に回るかな」

「明かせないほど信用ならないのか?」

「いや、口を封じる手段はいくらでも。ただ、あんまり広まってもね。残り二人は出入り激しくなる予定だから、あまりいないだろうし、知らないほうが動いてくれそうだし」

「何をさせる気だ?」


 今僕は皇子としてソティリオスに相対してる。

 だから自己紹介しか許されてない先輩たちは、僕たちの会話には入れずじっとしてた。


 それでもソティリオスが不穏なこと言うから、ジョーがさらに不安そうになってる。

 ステファノ先輩が期待して見てるのも、なんか駄目な気もするなぁ。


「一人はステファノ先輩の稼業を補佐する立ち位置。だから、出身のリビウスや画商と連絡をして国外に出る可能性もある」

「あぁ、名の知れた画家だったな。…………そう言えば青い絵が話題に。あれは、ゴーレムだったのか」


 今さらソティリオスが気づいて額を押さえる。

 ただ学生が出しただけの作品を知ってるのも驚いたけど、こういうのが社交として情報集めてるってことなんだろうなぁ。


「もう一人は手先が器用だから、作業を黙々と重ねて、技術を突き詰めていくタイプ」

「…………おい、錬金術科卒業生の反応がおかしいぞ」


 オレスについて話したら、ジョーあからさまに顔を顰めて、ステファノ先輩も特に隠すことなく違うんじゃないって顔してる。


「うーん、もっと雑に言うと、対応能力とコミュニケーション能力に難あり。言われたことを言われたとおりにはできるし、物覚えが悪いわけじゃないけど創意工夫には向かない、指示待ち人間」

「ずいぶんな言いようだが、まぁ、わかった。引き込んでるということは、面倒なことはないんだな?」

「攻撃性は低いし、基本口だけの見栄っ張り。しっかり上に立つ相手がいれば従順かな」


 言ってて、僕はオレスにやらせるべきことを決めた。


「うん、オレスは技師の工房で、イデスと一緒に技術を覚えてもらおう。大親方の下でなら、素直に技術を学ぶだろうし」

「そちらはすでにお前の同輩が二人言ってるはずだが?」

「ウー・ヤーとネヴロフは技術覚えるよりも、自分なりの錬金術したい人だから。技師として継承する人員は別にいたほうがいい」


 イデスは、ソティリオスが後見になって押さえてる錬金術師の卵。

 だからルキウサリアに残る人員は別に確保したほうが、横やりも入らないと思うんだ。


 ソティリオスは一つ頷くと、ステファノ先輩に目を向けた。


「つまり、そこの画家の卒業生なら、独自の錬金術も生み出せると?」

「まぁ、ジョーとオレスは錬金術を扱えはしても自分で作ることは難しいだろうね。けどステファノ先輩なら自分が望む錬金術を突き詰めて至ると思う」

「そうか、ではそちらをこっちでも勧誘してもいいのか?」

「えー、うーん」

「なんだその煮え切らない反応は?」


 ソティリオスは僕の反応を見るために言ったんだろうけど、微妙な様子に眉を顰める。

 反対されたら、それはそれで何か切り返そうとしてたんだろうけどね。

 賛同されたらその程度の人員、とでも見切りつけるつもりだったか。


「皇子としてなら止めないし、僕とソティリオスの両方にいい顔するだろうことも想像できる。けど、友人としてだと止めるかなぁって」

「本当になんなんだ、その評価は。理由を言え理由を」

「ステファノ先輩、やりたいことがあると簡単に秘密売るから」


 僕が見たら、全く悪びれなく頷いて笑ってる。

 その様子にソティリオスも溜め息を吐いた。


「逆に、そんな者を引き入れて大丈夫なのか?」

「僕の正体知って、勝手に来た感じかな。けど放り出すわけにもいかないから。まぁ、やりたいこと明確だし、餌をぶら下げて、必要なら取り上げる感じ?」


 言ってみても、ステファノ先輩はにこにこしてる。

 これは完全にどんな餌が来るかを楽しみにしるなぁ。

 うん、テスタタイプだ。


「…………できればあまり大がかりに鞭うつことしたくないんで、大人しくしておいてくださいね」

「おい、まさか。妙にルキウサリア国王が警戒するのはすでに何かやられた後か?」

「未遂だから、あとステファノ先輩じゃない別口」

「こっちを見て言ってみろ。未遂と言っておいて、裏で何もしなかったわけがない」


 ソティリオスが妙な勘を発揮する。


「やめてよ、僕がろくでもないみたいじゃないか」

「学園でそれなりに好き勝手やってるんだから、今さら人目を気にするな」

「社交とか作法とかちゃんとしろってうるさいのに、言ってることが違うっじゃないか」

「それとこれとは別だ。錬金術に関しては裏に潜られると何をしているかも、何をしでかしているかもわからん。やるなら事前に根回しをしろ」

「そう言うのじゃないし、それじゃ思いついてこれやってみようなんて学生の気軽さがさ」


 疑わしい目を向けられても、封印図書館爆破しようとしたとか言うわけがない。

 そして頷いてるステファノ先輩を、ジョーが呆れた目で見てる。

 気づいたソティリオスも、制御のしにくさを感じたらしい。


「錬金術科には、変わり者しかいないのか。いや、そもそも錬金術に手を出すなら変わっていて然るべきなのか?」

「錬金術科と言っても、錬金術やりたくて入学する人は少数だよ」

「お前の同輩たちは、誰も錬金術を習得するために入っただろう?」

「だから僕たちの学年は錬金術科でも違ってるんだよね」

「お前がそう先導したようにしか見えないが?」

「失礼な。いや、最初は状況整えようとちょっと性急に動いたけど。でもみんなの性格と、錬金術するには状況改善必要だったんだって」


 言って思い出した。

 ついでに先輩たちにも共有するためにも言っておこう。


「基本的にジョーとオレスはルキウサリアに残るつもりがある。けどステファノ先輩とイア先輩は国に帰るのも視野に入れた、独自勢力と思ったほうがいい。で、イデスはソティリオス側」

「ほう、お前側はいないのか? 帝都にいるニノホトの二人は?」

「そっちは妃殿下がお気に召してるみたいでね。けど、目的としては僕が戻ったらこっちにくるかな? それよりも、後輩が絡んでくるかも。ニノホトからのショウシは、卒業後たぶんその二人に接触する。ウィーリャは知ってのとおり、イマム大公が送り込んできてる。他にも実はポーとアシュルはテスタの回し者だ。エフィもそうだけど、今は距離置いてるかな」

「テスタ老と言うなら、ルキウサリアの国としてではないのか?」

「関係ないって言うか、僕が何してるか探りたかったみたいでね。だから本人たちにも目的は伝えられてはいない。で、前にも言ったトリキスは実家のほうから、僕がフェルに盛った毒があれば調べるように送り込まれてる」


 けっこう込み入った錬金術科の実情に、ソティリオスは呆れてた。


「またずいぶん懐かしい話を持ち出すものだな」

「その懐かしい話でトリキスの家を追い詰めてる派閥って、ルカイオス公爵なの?」

「いや、うちもそうだろうな。そもそも帝室に仕える医師家系だ。中立を謳っているが帝室に寄り添う形で、現状は正統を担う一端になっているのだから崩せるなら崩したい」

「えー、ウェルンタース伯爵引っ張り込んだのに。思ったより従来の皇帝派閥って陛下のほうに流れ来てないの?」

「あれはやっぱりお前か。ルカイオス公爵側にいても面倒だが、嫌なところを狙って。こちらとしてもあの皇帝のサロンでの動きはできる限り牽制したに決まっているだろう」

「あぁ、わざわざ庭園に出てきて睨んでたもんね」


 その言葉でソティリオスはさらに踏み込んでくる。


「ラトラスの裏にいるのもお前だろう? ネヴロフも動かせる恩がある。が、正体はばれてない、違うか?」

「そこ二人は錬金術学んでくれるだけでいいし。政治に関わらせるのも向いてないよ」


 トリキスのほうは、やっぱり家ごと肩見狭くなった末に錬金術科に入れられたようだ。

 その上で大派閥の間で、どちらとも関係がある故に、どちらからも切られそうになってる。

 そうなれば、父からもフェルの件で信用ないし、没落必至だろう。


「それは惜しいな。うん、トリキスの家が切られるなら僕が拾おう。医師をしていたという知識と技術を持つ一族なんて、放り出すのはもったいない」

「…………切られるのを待つのか? そもそも治療法を知ってるのだから近づけるだろう」

「そこは、向こうが僕を疑ってるからね。一回、第一皇子に頭下げなきゃいけない状況にでも陥らないと、話聞かないだろうし。助けを求められたら考えるよ」

「お前に力をつけられると困るから、当分切らないように言っておく」


 ひどいけど、まぁ、トリキスの家からするとそのほうがいいんだろうな。


 というか、僕がフェルの病気治したって、ソティリオスが疑わない。

 指摘したら嫌な顔されそうだから言わないけど、実力は認められてるんだなぁ、僕。


定期更新(予約投稿をしくじりました。明日は明日で投稿します)

次回:ヘルプを要請される3

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― 新着の感想 ―
めっちゃ明け透けな情報交換だ。笑 トリキスのおうち、助けを求められたら考える、なんて舌の根も乾かぬうちに取り込むことになるやつでは…???
並べられると、どれだけ手を出してんだよ、って頭抱えたくなるソティリオスの気持ちもほんのちょっと分かる。原因はおまえの父親だぞー、半分くらい。
ソーくん実家出るつもりでいるのに第一皇子のやべぇ内幕を知っちゃって大丈夫?弟にコレの相手させるの可哀想って気持ちにならん?弟くんだいぶ役不足よ?
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