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病院行ってみた結果。

——まあ、というわけで、女医さんの計らいにより一見健康そのものと思えるような俺の体を、精密検査で隅々まで調べ尽くすこととなった。

 よくわかんないゴツイ機械みたいなのに横たわって乗せられたりなんだりと、まあいろいろあって、全身の検査には五時間程を要した。

 来たのが朝方であったため、検査が全て終わったころには昼はとっくに過ぎていた。

そして、検査が終わって一時間程が経過した頃、結果が出た。

再び診察室に呼ばれた俺と両親は、俺のカルテを持った例の女医さんと対面する。


「結論から言いましょう。天谷咲人さんの言い分は十分な信憑性があります」

「えっ、ほ、本当ですか?」

「ええ、しっかり医学的根拠に基づいて判断しています。

それは偏に、臓器の健康さです。当然でありますが人間が生活を営む以上、体の基盤となる臓器は使われた機械のパーツのように劣化し続けます。わかりやすい劣化ですと、煙草を吸うことでの肺の劣化、アルコールを摂取することでの腎臓の劣化などです。しかし、極端に体に悪いことをせずとも人の臓器というのは一定値で劣化します。体に害のある煙草やアルコール、もっと気軽なものですと添加物など、そういったものが臓器を劣化させます。どんなに食生活に気を使っていても外的要因である排気ガスや細菌などでも劣化は促進されます。

 しかし、天谷さんの場合、その劣化が一切見えないのです。健康体などと表現するのはおこがましい程、臓器が綺麗すぎるのです。一般の十七歳と比較して、という綺麗さではありません。まるで、天谷さんが今この瞬間産まれてきたような、そんな体です。すべてが一切の使用感も劣化跡もない新品のパーツで構成された年代物の機械を見ているような気分です。それに、臓器に関わらず、肌や髪にもその器質が垣間見えます。触診の際に少々肌や髪に触れさせていただきましたが、人が生活する以上ついているであろう汚れを一切感じさせない綺麗なものでした。いくら肌や髪のトリートメントに気づかっていても、これほどに綺麗なものは見たことがありません。今まで生活してきた人間とは思えない体です」

「なるほど」

「お判りいただけましたか?」

「いえ全く」

「…………」

「…………すいません」


 聞く気がなかったわけではない。

 しかし、医学的根拠とかもう字面だけで難しそうな単語が飛んできた瞬間、それ以降の発言を脳がシャットアウトしてしまったのだ。

 こちとら医学のいの字も知らないおバカ高校生である。俺の頭にあったのは納得でもなければ批判でもなく、純粋無垢な「?」のみだった。


「えー、つまりですね。天谷さんの体は健康過ぎて綺麗すぎるということです。今まで生活してきた人間とは思えないくらいに」

 俺の馬鹿頭脳でもわかるように女医さんは掻い摘んで説明をした。

 なるほど、つまり俺の体が新品同様でビックリみたいな話か。

 

「え、えっと、じゃあその、俺の言い分は信じてくれる。ということでいいんですか?」

「まあ、信じざるを得ないですね。現に言い分を立証できるだけの判断材料があるわけで——」

「あ、あの!」

 女医さんの言葉を遮り、声を発したのは母さんだった。


「なんでしょう。お母様」

「それで、——……む、息子は治るのでしょうか」

 治る。という表現が適切なのかはわからない。

 そもそも病気なのかどうかもわからない事態だ。

 しかし、母さんの言いたいことはわかる。


 果たして、俺は男に戻れるのだろうか。


 結局のところ、俺も両親もそれが気になって病院に来たわけだ。

 説明に時間がかかってしまったが、本題はそれだ。

「——それは」

 女医さんは口を開いて、変わらず率直にものを言う。


「わかりません」

 きっぱりとそう言われた。

「何せ今まで前例のない事態です。世界中の資料所を漁ってもこんな事例は出てこないでしょう。それぐらいに今回の事態は稀有なものです。なので、一医者に過ぎない私では、天谷咲人さんの治療ができるとはとてもではないですが言えません」

「そう……ですよね」

 わかってはいた、という母さんの表情は何処か濁っていた。

 こんなフィクション染みた展開に医学療法が通じるかどうかも怪しいような事態なのだ。女医さんの医者としての腕がどれほどのモノかは知らないが、俺の体を元通りにできるほどのゴットハンドの持ち主とは申し訳ないが思えない。

 女医さんに限らず、どんな名医でも治せるかどうかなんてわからないだろう。それくらい非現実的な事態ではある。

 カルテの症例の欄に書かれる病名は間違いなく俺が世界初だ。なんて書かれるのかはわからないけど。


「お力になれず申し訳ありません。もし今後困ったことがあれば私にご連絡ください。必要でしたら大きい病院への推薦状も書きますので」

「あ、ありがとうございます」

 一言礼を言ってから、俺と両親は診察室を後にした。

 医者に相談できたのは気持ち的に大きい意味を成したかもしれないが、状況的にも前進も後退もしていない。

 結局、わからずじまいか……。

医学知識ないのでテキトー言ってます。

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