第0章 0000
初めて小説を書きました。
拙い文章ではありますが、最後まで書き切ることを目標に頑張ります。
とある深い山奥に真宵の森と呼ばれる場所がありました。その場所は立ち入った者は一人残らず戻ってくることが出来ないと言われていました。
そこに、ある吸血鬼の夫婦がおりました。とても仲の良い夫婦でした。
夫婦は無意味な争いを好まず、人間から身を隠す為に森に結界を張り、不思議な力で身を隠しておりました。その力こそが真宵の森と呼ばれる夫婦にとっての隠れ家を作り出していたのです。
その夫婦にはニ人の子どもがおり、一人は吸血鬼の血がとても薄く陽の光を浴びても少し苦しいだけで灰になりません。人間を吸血鬼に変えることもできない、とても人間に近い存在でした。
それは仲間たちの間でも差別の対象となりました。吸血鬼は人間を格下に見るのです。
そこで夫婦は、その子どもを人間の下で育てることにしました。信頼の置ける人間の下へ。
もう一人の子どもは、逆にとても吸血鬼の力が強く、それは夫婦を安心させると共にその子どもがなおざりにされる要因にもなりました。
夫婦は吸血鬼を率いる組織に所属しており、常に忙しくあまり子どもの下に帰ることがありませんでした。
夫婦の家はとても広く、何人もの使用人がいます。けれども子どもの心を埋めることは出来ませんでした。それに代わって孤独がいつも寄り添うのでした。
ある日、さみしさに限界を迎えた子どもが夫婦の気を引く為屋敷から行方を眩ませました。
ある意味では成功と言ってもいいかもしれません。最終的な結果を除けば。
屋敷中大騒ぎになりました。
すぐに夫婦にも報告が行きます。
気を引くどころではありません。
夫婦は、子どものことが大好きでした。心配で心配で堪りませんでした。報告を受けた夫婦はすぐさま屋敷に戻り、自ら子どもを探しました。
必死で探しますが、なかなか見つけることが出来ません。夫婦の貼った結界内であれば場所は特定出来ましたが、子どもの気配は感じられません。
夫婦の力の及ばない結界の外では子どもを守るものはなく、敵意を持った人間に見つかってしまえば傷付けられる可能性があるばかりか最悪の場合、殺されてしまいます。
その子どもはとても小さいのです。人間で例えるとすれば五歳位の、まだ小学生にも上がっていない程の年齢でした。戦えるはずもありません。
ほとんど一晩中森の中で駆け回り、子どもの名前を叫び続け、吸血鬼と言えど遠からず体力の限界を感じ始めていました。
だんだんと空が白みを帯びていき、それと同時に絶望がじわりと忍び寄ってきます。
太陽が昇ってしまえば吸血鬼の身ではたちまち灰になってしまいます。捜索どころではありません。いくら強い吸血鬼ですら、再生はすれども灰化は免れません。
それは夫婦にも、捜索に向かっている吸血鬼たちにも、更にはその子どもにも例外はありません。
いよいよ陽の光が差し込もうとしたその時、夫が子どもを見つけました。
安堵したのも束の間、子どものその先に見えた人影に夫は戦慄しました。
子どもから10mほど離れた先に、木陰に隠れるようにしてショットガンを構えた吸血鬼ハンターがいたのです。子どもはまだ気付いていません。
夫は疲労し、棒のようになった足を無理矢理動かし子どもの下へ駆け寄ります。
ズガンッ
対吸血鬼用の特殊な銀弾が込められたショットガンは、早朝の静かな森にその発砲音を重く響き渡らせました。
ポタポタと血が地面に滴り落ちます。
それは間一髪のところで子どもを庇うことができた、けれども避けることが出来なかった夫の血でした。
瞬く間に息をするのも苦しくなり、朦朧としそうになる意識を強く持ち、夫はハンターに向かって叫びました。
吸血鬼を率いる夫婦の一族と、吸血鬼ハンターを纏める教会は同盟を結んでおりました。
人間を襲わない代わりに、ハンターも吸血鬼を襲わないと。それを破ってしまえばどうなるかなど明白です。ニつの種族の間には大きな戦闘が起こり、少なくはない数の死傷者が出ることでしょう。
夫が一族の名前を叫んだことによりハンターは一瞬でそれを理解し、青ざめた顔で逃げるように去って行きました。
恐らくこのハンターは後に教会から酷い罰を受けることでしょう。
夫は今度こそ安堵し、怯え、泣いている自分の子どもを強く抱きしめました。この子に怪我がなくて良かったと。日が昇る前に見つけ出せて良かったと。
しかし、そうしているうちにも朝は近付いてきます。ゆっくりしている時間はありません。
夫は子どもを抱き抱え、急ぎ屋敷に戻りました。
屋敷では、妻と使用人全員が夫と子どもの帰りを待っていました。
屋敷に戻る途中、子どもは安心したのか眠ってしまっていました。使用人に子どもを預けたその瞬間、夫は膝から崩れるように倒れ意識を手放しました。
妻は驚愕に目を見開き、夫を凝視したまま動けずにいました。
数秒が経ち、思考が回復すると倒れた夫の背中が灰になっていくことに気が付きました。
空はかなり白くなっているが、夫が帰った時にはまだ日は昇っていなかったはずだ。吸血鬼が灰になるには日を浴びるか銀弾や銀で出来た武器で攻撃されなければ…。まさか。妻は微かな可能性に気付き、それを本能が否定しましたが他に理由がありません。
目に水が溢れ、視界がぼやけます。
妻は幼い子どもがぐずるように、倒れている夫の肩を掴むと大きく揺さぶりながら懇願します。
起きて欲しいと。死なないで欲しいと。
それらを発言することによって更に頭は現実を理解し、心が耐えられず溢れた感情が目から流れ落ちました。
妻の嗚咽が聴こえたのか、夫はうっすらと目を開け、すぐ傍にいる最愛の妻と我が子に最期の力で愛と感謝の言葉を伝えると灰になり消えてしまいました。
◆ ◆ ◆
とある深い山奥に真宵の森と呼ばれる場所がありました。その場所は立ち入った者は一人残らず戻ってくることが出来ないと言われていました。
そこに、ある吸血鬼の女の子がおりました。とても可愛い女の子でした。
女の子には母親が一人いましたが、ある日を境に家に帰らないことが多くなりました。
女の子は寂しかったので仲間を増やす為に次々と人間を襲うようになりました。
これは少し昔にあった悲しいお話。
最後までご覧いただきありがとうございます。




