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22話 視線で発熱させる男。

 

 昼休みになった。


 俺は自分の席に座り、教室の中を見回しながら、その姿を見つけようとした。

 だけど教室のどこにも彼女はいない。なんとなしに窓の外を見てみるも、校門を潜ってくる人ももういなかった。


 今日のこのクラスには、欠席の生徒が二人いる。

 一人は恋水さんという女子生徒だ。確か、昨日の昼休みに俺に話しかけてくれた子だ。そんな恋水さんは、今日は発熱で学校を欠席とのことだった。


『恋水ちゃん、昨日、隠川くんと喋ったから熱が出たんだってっ』


『私も、昨日の夜とかヤバかった。隠川くんの事思い出すと、全然寝れなかったもん!』


『だよね! 熱が! 知恵熱と、恋熱がヤバいよね!』


「…………」


 ……教室の中で、俺の名前が聞こえてきた気がした。

 俺のせいで熱が出た……。俺のせいで、寝れなかった……。


 ……なんだろう。それは、なんというか、何か悪いものが蔓延しているみたいな感じだろうか……。

 まるで、伝染するみたいに。


 俺は会話が聞こえてくる方をチラッと見てみた。


「「「ぎゃ!」」」


 彼女たちと目が合った。

 途端に、ギョッとした顔をするクラスの女子生徒たち。

 顔が真っ赤に染まり、びっくりした様に飛び跳ねていた。


「あ! もうっ、隠川くん! 視線、禁止!」


「あっ、ちょっ」


 パッと、こっちを振り返ったのは、俺の前の席の女子、冬下さんだ。冬下きいなさん。

 今日の二時間目、消しゴムを忘れてしまったあの冬下さんだ。


「隠川くんの視線は、危険だからだめ! みんな、熱出しちゃう! だから、隠してて! 見るなら私のことだけにして!」


「あっ、ちょっ」


 そう言って、冬下さんは俺の目を手で覆って、隠してしまった。


 ……やっぱり、悪い意味じゃないか!?


『隠川くん、やばい。今日もカッコ良すぎて、めっちゃドキドキする』


『てか、冬下さん、ずるい! なんか、隠川くんとめっちゃ仲良くなってる!』


『私も隠川くんの席の近くがよかったのに〜! くそぉ〜〜』


 俺は冬下さんに目を隠されて、耳まで隠されて、しばらくするとようやく開放してもらった。


 ともかく。

 今日は恋水さんという子が欠席をしていた。そして、もう一人、春風さんも休みのようだった。


 昨日の放課後に、会った春風さん。

 それで一応、別れ際に『明日は学校行くよ……』と言ってくれたけど……来ていない。

 朝からいなくて、途中で来るかと思ったけど、結局来なかった。

 ずっと待ってたけど……多分今日は、春風さん、来ないんじゃないかと思う……。


 薄々、そうなる可能性はある……とは思っていた。

 昨日の今日だ。

 もし、俺だったら、多分……学校を休むと思う。

 行こうと思っても、行けなかったり、行こうと思うほど、逆に足が動かなかったり……。


 この一年間、俺はずっとそんな感じだった。

 もちろん、それは俺の場合で、春風さんは違うかもしれない。


 でも……多分、今日は来ない気がした。


「あの……隠川くん」


 そんな俺の肩が、とんとんと優しく叩かれる。

 見てみると、隣の席に座っている栗本さんが話しかけてくれていた。


「栗本さん」


「ごめんなさい。隠川くん、何か考え事中でしたので、後にしようとも思ったのですが……」


「あ、ううん。全然大丈夫。ありがとう。ごめん」


 俺は栗本さんの方を向いた。

 それで、どうしたのかな。


「あの、隠川くん、昨日……春風さんに会いましたか?」


「えっ、あ、うん……会った」


「そうでしたか。あの、実は春風さんからさっきメールが来まして、隠川くん宛てにメッセージがあるそうです」


「メッセージ……」


 春風さんからのメッセージ。


 これです、と言うと、栗本さんは手に持っていたスマホの画面を見せてくれた。

 そこには、春風さんからのメッセージが映し出されていたのだった。


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