41/142
蝉鳴く頃 5
それから2時間もの間、一ノ瀬は言葉を発しないで、ずっと勉強していた。
美和の参考書の一単元が終わったとき、時計は12時を指していた。
お腹空いたな。
自覚した途端、急に空腹感が強くなった。
一ノ瀬はまだ集中しているようだ。
まだ声は掛けない方がいいよね?
うん、やっぱり整った顔ってのはこうよね。
まつ毛長いなぁ…。
一ノ瀬の顔を観察していると、彼はようやく美和の視線に気付いた。
「ん?どした?」
「12時だけど…お昼どうする?」
「もうそんな時間か。矢崎さん午後もやってく?」
「うん。夏期講習、2時からなんだ。」
「じゃあそろそろ食べないとだな。何食べたい?」
「うーん、マックかラーメンかな。一ノ瀬くんは?」
「俺、ラーメンがいい。近くに美味いのがあるんだ。」
「じゃあそこで。」