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Hey jude 10
合唱祭当日。
女子は教室で先に着替えていた。
男子の衣装は簡単で、白シャツに黒ネクタイ、長い布を腰に巻きつけた高そうなレストランの店員のようなものだ。
「もう入っていいよ」
廊下の男子達に声を掛けたのは田中さん…勿論ギャルグループに属する子である。
「おおーっ!」
「可愛いじゃん、女子達」
少々大袈裟気味に沢田くんと山西くんが女子の衣装を褒めながら教室に入る。
一ノ瀬くんと目が合った。
「可愛い…」
美和は一瞬、自分が可愛いと言われたのかと思ってしまった。
即座にその考えを消した。
「可愛いよね、この衣装。普通科にいるのに、ドレスをミシンで縫うとは思わなかったよ。」
「あ、ああ…」
一ノ瀬くんの顔が若干赤い。
こんなに顔赤い人だったっけ?
「男子の衣装もミシンで縫うとこ結構あったん?」
「ああ、この足の布とネクタイぐらいだから、何とか出来たよ。ミシンなんて中学生ぶりに触ったよ。」