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Hey jude 7
合唱の練習は順調だった。
そこそこの進学校であり、名門校であるS高。
みんなどんなに繕っても根は真面目なのだ。
中学の合唱コンクールで苦労した人も多いのだろう。
指揮者の沢田くんの指示のもと、練習が進んでいた。
美和は結局、伴奏を引き受けることにした。
農上先生から話があった時点で、だいぶ困っていたのだろう。
伴奏者歴のある美和が伴奏を申し出ないというのは、「面倒くさい人」認定を受ける恐れがある。
基本、波風立てずに平和に生きていたい。
伴奏譜は負担になる程のものでもなかった。
伴奏者になることによって、美和は平和を守ったのだ。
一ノ瀬は今日も合唱の練習に出なかった。
真面目なんだか、真面目じゃないんだか…。
やっぱり、どこか掴めない人である。