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Hey jude 4
「矢崎」
珍しく担任、農上先生が声を掛けてきた。
「はい」
「矢崎、伴奏やらんのか…?」
「うーん…」
1年の合唱祭のとき、美和は伴奏を担当していた。
ピアノは長くやっていた。
中学の頃から伴奏は美和の役割だった。
しかし伴奏者というものは、合唱の練習中はとっても暇なのだ。
蚊帳の外にいる気分になる。
2年の合唱祭では伴奏はやらなかった。
みんなで一緒に踊るのもいいものだと思った記憶がある。
もう、伴奏はいいかな…。
そう思っていた。でも…
農上先生が声を掛けてきたということは、伴奏してくれそうな人がいないということか。
伴奏者が不在というのも困るだろう。
美和は伴奏をするという選択肢について、考える時間が増えた。