日常 7
「ちょっと面白い子がいてさ。同じクラスなんだけど」
「うん。女子?」
「ううん、男子。」
香織が飲みかけのコーラを吹き出しかけて、堪えた。
K塾の2階にはマクドナルドがある。
講義の前後に食事を取るにはちょうど良い。
「珍しい。美和が男子の話とか。」
「別に男子と全く会話してないとかじゃないから。」
「美和。いつも美和から聞く高校の話って弓道部のメンヘラカップル絡みの苦労話か、好みじゃない男に絡まれて困ってる話ばっかよ?」
「ゔ…そんなこと…あるかも…。」
「で?その面白い子って?」
「ああ、一ノ瀬君っていうんだけどね。派手な子なんだけど、独り言めっちゃ大きくて。クラスみんな明らかに聞いてるよね?ってぐらい大きいのよ。」
「へえ」
「授業中は大抵寝ててさ。窓側一番前なのに。先生スルーなんだけど。なのに、大学受験の勉強はちゃんとやってるっていう謎な人でさ。」
「いいじゃん。美和、楽しそうじゃん。」
香織がにやにやしている。
「いや、そんだけなんだけど…」
「その人…一ノ瀬くん…だっけ?美和とは何か無いの?」
「無いよ。特には」
「なんだ。つまらんわね。」
「そう言われましても」
「折角美和に春の匂いがしたのにぃ」