10/142
日常 2
「なあ木野。この時代の天皇って可哀想だよな」
「え?」
「こういう顔の人としか結婚できないとか俺、無理」
「ああ、ほぼおかめだよな」
美和が声のする方を見ると、一ノ瀬が金髪の木野と『あさきゆめみし』を読んでいた。
授業は寝るけど、やっぱ受験勉強はしてるのね。
そうだ、K塾の近くでばったり会ったっけ…。
「矢崎さんもこの問題集使ってんだ」
長髪パーマの山西が美和の机に置いたままの薄い問題集を手に取る。
「うん。薄い問題集ってハードル低くてやりやすいのよね。」
山西くんは派手だけど案外話しやすい。
お父さんが校長先生をやっているらしく、山西くん本人も話が上手いのだ。